日油協・佐藤新会長が会見、各社が油の価値高め、市場活性化し認知高めていく
日本植物油協会は5月29日、都内で佐藤達也会長(J-オイルミルズ社長)が会見を行い、新会長としての抱負を語った。
佐藤会長は、「植物油業界は一言で言うと厳しい。異常気象による穀物の不作、地政学上の問題、パナマ・スエズ両運河の航行の問題、為替の円安と逆風は引き続き吹いている。21~22年と記録的な高コストの時代があった。現在は落ち着いているが、高止まりしており、この状況はしばらく続くと見ている」と足元の環境について述べた。
その上で、「植物油業界は原料の調達に起因する事業環境に振り回される現実がある。コストアップがあれば売値に転嫁して業績維持するだけではなく、油の価値を高めていくことに各社が取り組んでいる。市場を活性化し、認知を高めていくことが協会としての取り組みの一つだ。実現するために、さまざまなPR活動を継続していく」と抱負を語った。
植物油の価値を高める取り組みとして、「機能面では、長持ちする油、調理がしやすい油、健康をうたう油などが多く出てきており、小売店からも好評で、市民権が高まっている。各社がユニークで特色あるものを出していくことが業界としての方向性だと考えている。日本は人口が減少し、高齢化も進んでいるので、黙っていれば需要は下がっていき、現実に需要は下がっている。過去3年間、コロナ禍で外食は大きなダメージを受け、需要が大きく減った。人々の行動パターンや生活様式が変わってきており、需要は完全に戻っていない。何かしていかないと、需要を維持することも難しい。各個社がそれぞれの特色のある油を出しながらアピールしていき、業界としてPR活動を通じて広めて、認知していくことが必要になる」と力を込めた。
〈不測時に円滑な調達続けられるように、各国との関係強化には今後も注力〉
食料安全保障については、「21年にカナダで菜種の歴史的な大不作が発生した。協会として日加菜種協議会を通じて、円滑な供給を維持できるように取り組み、豪州から輸入したことも、実際に機能した一つの例になる。米国で言えば日米パートナーシップという仕組みも存在している。これらを活用し、不測の事態が起きた時には、極力サプライチェーンが破綻しないよう、円滑に調達が続けられるように図っていくことも協会の大事な仕事だ」と述べた。
農水省は「不測時における食料安全保障に関する検討会」の報告書を取りまとめ、今後、法改正に取り組む予定だが、「不測の事態で供給制約があり、価格が上昇した時には、サステナブルに各社が油の供給を維持できるように、適正に価格が川下に転嫁できることを国からも支持いただきたい。価格が上昇し過ぎて、消費者が受け入れられないようなレベルになってしまった時には、生産可能な状況が維持されることのサポート、あるいは国民生活に支障を与えてしまう時には何らかの補填をいただければ、不測の事態に対する備えとしてはうまく機能する」という考えを述べた。
カナダや米国以外の各国との関係強化については、「豪州植物油協会、マレーシアパーム庁と良い関係を維持している。台湾、その他の国とも大使館経由で連携できるルートは構築している。需要国の中国やインドとも話ができる立場にはある」と、今後も力を入れていく考えだ。国際オリーブ協会(IOC)については、「長い良い関係があると自負している。オリーブ油は金額ベースで最大規模の大事な領域なので、関係を大事にしてさらに深めていきたい。日本オリーブオイル公正取引協議会が設立されたので、品質をきちんと担保できたエキストラバージンオリーブ油を消費者に責任を持って届けていく」とした。
今後の環境対応については、「CO2削減は植物油業界としては、構造上ハードルが高いと認識している。国として出されている目標に対しては、まだ足りてない部分があり、努力を続けていくことが必要だ。製油事業の特性から、エネルギー源として電力構成比が高くなく、脱炭素化の電力使用の転換が十分でないことは自覚している。その中で、政府の求める省エネ策の全ての対応はしていきたい」と語った。
〈大豆油糧日報2024年5月31日付〉