日本油脂検査協会、2023年もIOC理化学分析試験所タイプBと官能評価パネルをダブル認証

左から、遠藤正史専務理事、吉井俊行技術部長、中津川研一理事長、日清オイリオグループの鈴木俊久氏、J-オイルミルズの水野勢技世氏
左から、遠藤正史専務理事、吉井俊行技術部長、中津川研一理事長、日清オイリオグループの鈴木俊久氏、J-オイルミルズの水野勢技世氏

日本油脂検査協会は2023年、国際オリーブ協会(IOC)の理化学分析試験所タイプBと官能評価試験所(パネル)を、2022年から2年継続で認証を取得した。

有効期間は2023年12月から2024年11月までとなる。タイプBと官能評価パネルの「ダブル認証」は、東アジア初の快挙となった2020年を含め、今回で3回目だ。2024年3月28日に、日本オリーブオイル公正取引協議会が設立されたが、検査機関となる同協会が果たす役割は大きい。

中津川研一理事長は、「日本植物油協会をはじめ、ご協力頂いた多くの人に改めて感謝したい。2024年に日本オリーブオイル公正取引協議会が設立すると聞いていた。その大事な年を迎えるにあたり、迷惑をかけられないとの思いで認証試験にプレッシャーがかかったが、責任を果たすことが出来て安堵している」と語る。

理化学分析試験所は、IOCが定める技能評価基準を満たした機関・団体に与えられる。一方、官能評価の認証は公的機関しか受けることができない。ダブル認証は、オリーブ油製品を、官能評価と理化学分析という2つの視点から同時に確認できることを意味する。

遠藤正史専務理事は2年連続のダブル認証を受けて、「認証に向けて、やるべきことを明確にし、スケジュールを立て、それを確実に実行することが出来た」と振り返る。2021年に理化学分析の認証が取れなかったことで、2022年は絶対に認証を落とせないというプレッシャーの中、選任のプロジェクトリーダーを立てて役割を分担し、全員でチャレンジした。継続認証を目指した2023年は、あえてプロジェクトは立ち上げず、各職員が認証取得に向けた個人目標を自ら設定して自己管理を行い、管理者がその進捗を把握して成果をまとめてきたという。

「認証取得のプレッシャーは今回の継続認証の時の方があったと思うが、前年の取り組みを通じて、職員の技術力と自信、主体性は確実に高まったように感じている」と評価する。

〈官能評価の点数は2年目から満点、認証続けることがミッション、後継者の育成も課題〉

油脂の検査機関である同協会では、2018年からオリーブ油の対応を行ってきた。官能評価については、イタリアのコンテストで10年以上審査員を務め、経験豊富な日清オイリオグループ食品事業本部商品戦略部の鈴木俊久氏をパネルリーダーに迎えた。

サブリーダーとして、同様の知識と経験を有するJ-オイルミルズ家庭用油脂マーケティング部商品企画グループの水野勢技世プロフェッショナルの協力を得ることで、継続した認証を取得している。なお官能評価の点数は、最初の年こそ正答率94%だったが、2年目からは100%で減点なしの満点を維持しているという。

IOCの官能評価のパネル認証数は2022年の104から2023年は115に増えた。国別で見ると、オリーブ生産に力を入れるチュニジアが年々増加しており2年連続で最多となった。2022年の19から、2023年は29に増え、全体の4分の1を占める。ギリシャやヨルダン、トルコの数も増えているという。鈴木リーダーは「オリーブ油の市場が拡大しており、輸出するために認証の必要性が高まっている」と分析する。今後については、「認証を続けることがミッションだ。後継者も育てる必要がある」と課題を挙げる。

水野サブリーダーは、約30人のテイスターがいる社内のパネルチームでリーダーを務めており、新商品の商品開発、企画を行っている。IOCの官能評価の難しさについて、「世界の100を超えるパネルと同じ物差しを身に着ける必要がある。真値があるわけではないので、世界がどう評価するかを常に把握しながら訓練を続けていかなければならない」と述べる。

「日本市場のオリーブ油全体の品質レベルが安定していなければ、市場が縮小してしまうリスクがある。オリーブ油を正しく評価できる力を国内で有することが市場拡大に繋がる。国内でも分析できる受け皿が必要で、協会の役割は大切だ」と強調する。

〈経験を手順書とすることで認証継続へ、IOC本部に6年ぶり2人目の訪問〉

理化学試験については、当初実施していなかった項目が数多くあり、習熟までに時間を要したという。特に認証試験では、参加機関が出す分析値の中央値に、より近いことが求められる。

遠藤専務理事は、「2019年に申請を開始する以前は、IOCで示されている分析方法の詳細なノウハウは、手探り状態であった」と振り返る。これについては業界の取り組みとして各社の協力が得られ、結果の傾向や確認を行うことで対応することができたという。今後はその経験を手順書とすることで認証の継続を目指していく考えだ。

日本オリーブオイル公正取引協議会を立ち上げるにあたって、日本植物油協会がこれまで進めてきた活動の報告及びIOCとの関係強化を行うため、1月にスペインのIOC本部に訪問した際、吉井俊行技術部長も同行し、現地の官能ラボ及び理化学試験所も訪問した。同協会からスペインを訪れるのは6年ぶりで、2人目だという。

吉井部長は、「1回目の訪問では日本での官能検査や理化学試験の確立のため、分析方法を教わるのが主目的だったが、今回は官能評価や理化学試験の品質管理について確認してきた。日本はスタンダードな基準のサンプル入手が容易にできないが、スペインではオリーブ油が日常的に使われる油のため、品質管理をしていく中で、蓄積情報の土台が違っていると感じた」と印象を語る。

〈オリーブ油の理化学分析と官能評価の受託スタート、昨年は設立50周年迎える〉

遠藤専務理事は今後の取り組みについて、「2年連続で認証を受けることができたとはいえ、認証試験で満点合格ができた訳ではない。作成した各分析の手順書も今後もより良い手順書に随時アップグレードしていく必要がある。また、認証試験に参加している国や検査機関の分析値の傾向なども、引き続き情報収集していくことも必要だ」と課題を挙げる。

また、2024年3月に日本オリーブオイル公正取引協議会が設立されたが、同協会が担う役割については、「日本オリーブオイル公正取引協議会の検査機関として協力を行っていくため、2月からオリーブ油の理化学分析と官能評価の受託検査を正式にスタートさせた」という。

協議会の会員は公正マークの申請をすれば、エキストラバージンオリーブ油の製品ラベルに公正マークを付けることが出来るようになる。「その申請の際には、IOC認証を受けた検査機関による理化学分析と官能評価の検査証明が必要となるため、日本国内においてその環境を整える必要があった」とダブル認証の意義を語る。

同協議会は、エキストラバージンオリーブ油について不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択、事業者間の公正な競争を確保することを目的に設立された。「設立されたばかりのため、協議会に参加する会員は多くはないが、これから徐々に協議会の理念に賛同する会員が増えていき、オリーブ油市場の健全化に寄与していくものと期待している」と述べる。

協会としての中期的な目標について中津川理事長は、「2023年12月に設立50周年を迎えた。今回改めて50年前の設立経緯を振り返り、当協会の果たすべき使命などを再確認する良い機会となった。50年前と比べて取り扱う植物油脂の種類も増えており、JAS制度そのものも変化してきている。消費者が安心して安全な植物油脂を購入できる健全な市場を確保すること、製油業界の発展に寄与することの2つの大きな使命は今後も変わらない。時代の変化、環境の変化に合わせ、これからも新たな目標にチャレンジしていきたい」と述べる。

〈大豆油糧日報2024年6月5日付〉

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