【古閑産業社長に聞く】差別化した大豆供給、高度な選別や加工、多様な包装形態に対応
昭和6年創業の古閑産業(熊本県合志市)は、米の集荷業から歴史が始まり、現在は大豆や米、麦、雑穀の穀物流通、高度な選別・加工・包装に対応する。生産能力が強みで、大豆は一般的な1袋30kgに限らず1kgパックからフレコンまで多様な包装形態、ブレンドや加工も可能な手をかけた形で原料供給し価格競争から距離を置く。
同社は九州を中心とした食品メーカー、一般量販に販売するほか、OEMメーカーとして通販向け商品などへ大豆やブレンド品を供給する。
風力・石抜・粒形・色彩選別などの最新設備を導入し選別作業を自社内で行い、食品安全の意識の高まりに照準を合わせている。同社の古閑靖基代表取締役社長は、「以前は選別済みの原料を仕入れ販売していたが、異物などに厳しい視線が向けられる流れの中、自社で設備を入れ、輸入のみならず国産大豆も選別する。高度な選別は最終商品の品質均一化にも繋がり、とりわけ大豆の外観が重視される納豆業界などで重宝されている。学校給食に向けては1kgパックを量産し提供している」と話す。
原料のブレンドやパウダー・パフ化といった多様な加工もこなせる。大豆については、ひきわりや粉砕加工の要望が寄せられるほか、最近では「プロテイン系商品の用途で雑穀と大豆のブレンドのニーズもある。今後もさらに増えていくのではないか」と見ている。
同社の強みは生産能力だ。小ロットからフレコンなどの大ロットと、ニーズに応じた包装で提供し、「これまでは紙袋30kgがメインだったが、昨今は1kgで欲しいというユーザーが増えた。割高だが、現場で計量の手間なく保管作業が発生しないためトータルコストが低減できるようだ」と、大豆流通のニーズ変化を感じている。同社は06年に合志工場でISO9001、18年にFSSC22000認証を業界に先駆ける形で取得した。さらには資源を余すことなく活用し、大豆は皮などを廃棄せず自社内で飼料とし畜産農家に引き渡す。
〈九州産動向、フクユタカ下位等級は輸入とほぼ同水準か、「国産シフトは急激に進まない」〉
九州エリアの大豆の動向については、令和5年産入札が終盤に差し掛かる中、4年産の消化が優先されている状況と見る。「とりわけ4年産九州大豆は他エリアよりも価格が高水準だったことから、その分消化が進んでいない。加えて、九州地区はこれまで地産地消が多かったが、(九州産より価格が低い)北海道や東日本銘柄を調達し問題無く使えたことから、フクユタカの消費が若干低迷しているとも考えられる」と分析している。
5年産の九州産の品質は悪くないと評価するが、「小粒・規格外が多いことから安値がつき、(価格の高い)上位等級は需要面で影響を受けるのではないか」との見方を示す。国産大豆全体の需給に関しては、昨年4月入札の落札率が9割だったのに対し、今年同月は4割程度であることから「十分足りているとの意思表示ではないか」と指摘する。4年産在庫が潤沢な背景には、大豆製品と共に食べられることの多い米の価格上昇も関係しているのではと分析する。
6年産については、仮に不作傾向になっても繰越在庫で対応可能との見方を示す。実際に播種前入札では、4年産フクユタカは1万円を超えているのに対し今年は下回っている。
円安や堅調なシカゴ相場を背景に、フクユタカも下位等級に関しては輸入とほぼ同程度の価格になると見る。一方、国産への急激なシフトは簡単に進まないとの見方を示す。「輸入大豆は多くが複数年契約であり、加えて国産は(生産量が)ぶれ易い。原料原産地表示を変えるコストもある」ためだという。
福岡の新品種「ちくしB5号」については、「白目なので納豆に適するかもしれない。大粒品種で豆腐、みそ、しょうゆ、豆乳でも使われるのでは。テスト的には上手くいっているようだ。播種適期が長いのも天候被害リスク分散が期待できる」と話す。一方、播種時期がブロックローテーションに適するかが重要だと指摘する。加えて「仮に台風などに見舞われた際にどの程度減収になるか注視が必要」とも話す。
〈大豆油糧日報2024年6月10日付〉