【トップインタビュー】染野屋・小野篤人代表取締役社長兼CEO、欧州全土から豆腐の引き合いあり、レストラン「Nobu」欧州15店舗で採用実現へ
豆腐の移動販売を行う染野屋は、スペインのバルセロナに欧州本部を構え、海外まで拠点を広げている。
2023年11月にはマレーシアのクアラルンプールに海外2号店を出店した。取引先は順調に増えており、マレーシアを飛び越えシンガポールまで商談に行くという。
国内ではBtoCのみだが、欧州ではBtoBも取り扱い、採用実績を伸ばしている。高級路線の豆腐で勝負し、「欧州の人々にとって、高級な豆腐は珍しく感じる。本物の豆腐を小売店が欲しがるため、卸が動いている」と手応えを得ている。レストランやホテルなどの採用も多い。海外の人に豆腐のおいしさが分かるのか、と懸念したこともあったが、試食をしてもらうと「豆腐のおいしさを知らない人も、豆腐が苦手だった人も、買って帰ってくれる」と話す。店頭で人気なのは、にがりで寄せた木綿豆腐や寄せ豆腐、現地にない生湯葉だ。
海外では、日本食レストランを別のアジア人が経営するといったケースが多い。「現地の人は本当の日本食を求めている。当社の豆腐は欧州全土から引き合いがあり、このほど、指定添加物を使わず、風味を落とさずに豆腐の消費期限を延ばす方法を実現する機械が完成した」と語る。世界的に展開されているレストラン「Nobu」のうち、欧州15店舗で染野屋の豆腐を使用したいとの要望があり、実現の目途が立ったところだ。また、3年後を目標に、パリに店舗を出店する計画だ。
〈求人募集のため最低固定給与を一律4万円増加、YouTubeに採用広告を出稿する計画も〉
国内では、2024年3月に、移動販売スタッフの最低固定給与を一律4万円増加させた。経験・未経験問わず27万円~30万円に加え歩合給が正式入社時のスタート給与となる。この施策により求人応募が多く集まり「面接が追い付かない。以前から応募は来ていたが、5倍に増えた」と大きな反響があった。
給与の増加を決めたのは、物価の上昇に加え、全国まで営業所を広げる計画があり従業員を増やす必要があるからだと説明する。物流・流通を自社で完結させる展望も掲げている。
求人を募集するために、FacebookやGoogleに加え、YouTubeに採用広告を出稿する計画がある。特に、YouTubeでの採用広告は、他業界を含め珍しい取り組みとなっている。内容は、同社YouTubeチャンネル内の人気動画で、移動販売員が月収100万円を稼ぐというもの。就職活動において、動画を通して社風が分かるという利点もあるとする。
応募は年代や性別を問わず集まるという。同社では、全営業所の中で最も売上が高い女性従業員を「年間クイーン」として表彰しており、現在シングルマザーの女性従業員がそのタイトルを獲得し、後に彼女の夢の一軒家を購入したことがあった。この事例を女性求職者に向けて発信していく。
「売上規模という数字には興味がない」と小野社長。「この仕事に全力で取り組んでいるスタッフを成功させたい。それが目標だ」と話す。
【小野篤人代表取締役社長兼CEOプロフィール】
おの・あつと 1973年東京都生まれ。大学卒業後、リース会社に就職。2年後退職し、雑貨販売等の代理店経営を個人事業として始める。1999年、義父の死をきっかけに妻の実家である豆富店を手伝う。2004年に法人化し、代表取締役に就任。移動販売に特化した販売システムを構築し、現在国内は関東・東海・北陸エリアを中心に100台以上を稼働。海外はスペイン・マレーシアに生産拠点を設け国内と同じ伝統の製法にて豆富類を製造販売。
〈大豆油糧日報2024年6月21付〉