【大豆取扱い道内トップの藤井・社長インタビュー】道産大豆の複数年契約に着手、国産は追い風の一方歩留まり向上で需要量減、増産と併せて需要促進の仕組みを

藤井英樹代表取締役社長
藤井英樹代表取締役社長

大豆の取扱量で道内トップ、全国の穀物商の中でも高いシェアを誇る藤井(旭川市)は、ユーザーと伴走しながら北海道産大豆の複数年契約に着手するなど国産大豆の利用促進に励んでいる。

国は大豆の生産努力目標として(30年度までに)34万tを掲げるなど国産大豆の生産振興が打ち出されているが、同社の藤井英樹代表取締役社長は、増産と同時に実需に対して積極的な消化を促す仕組み構築も必要だと指摘する。藤井社長に、大豆の自給率向上に向けての考え方、同社における取り組み、市場の見通しを聞いた。

――国産大豆の輸入大豆対比での価格競争力が出てきています

Non-GMO 大豆のプレミアム価格の高止まりや、現在の1ドル150円台の円安は品代(大豆そのものの価格)のみならず、船運賃や保険などもドル建なため関連する全てに影響し、輸入大豆は昔に比べ相当高くなっている。安定供給の観点で大手メーカーが軸足を全て国産に移すことはできないが、この状況は国産大豆、道産大豆にとって追い風と言える。

――国産大豆の需要増の実感はありますか

ウクライナ情勢や気象変動といった世界情勢に穀物は振り回される。国策として国内での米、麦、大豆の生産振興は大切だ。また、食品メーカーの間でも共通認識なのは、たん白質の取り合いになるのは間違いないということ。肉1kgに対し10kgの飼料が必要だ。中国やインドなど人口の多い国の需要が旺盛であれば取り合いになり、国産大豆増産の方向性は間違いではない。

一方、しっかり需要がついてきているのか。国産大豆は今頃から前年産の販売が本格化するが、北米のサプライヤー、生産者、大豆協会はこの10月には来年作付する大豆を日本に売りに来る。そこでメーカーが輸入大豆を契約すれば、その分国産は売れなくなる。

私が他業界から穀物業界に戻ったのが昭和62年(1987年)。当時、豆腐や納豆、みそなど食品大豆の需要量は約100万tだった。大豆60kgから400gの豆腐が500~600丁とれていた。そこから、機械技術向上、食品添加物の進歩などで歩留まりが向上、現在は充てん豆腐であれば1,200丁と、同じ大豆の量からとれる数が1ケタ増えた。そのため近年の食品大豆需要量は減っているのではないか。

国産大豆の増産を掲げる以上、国には実需に対し「何割かでも使ってほしい」と積極的な消費を働きかけてほしい。保管料もかかるため、消費が追い付かないのであれば、せめて備蓄倉庫を作って拡充してほしい。北海道は広大な土地があるが、高齢化で農業人口は減ってくる。そのような中、若い農家が選ぶのは、麦、大豆、米といった機械化で効率良く、冬に営農計画を立て秋には大方の収入が把握できる安定した作物だろう。農家の生産意欲に応えるためにも消費が大切だ。

〈農産物検査資格を積極的に取得、北海道産ブランドのさらなる向上に寄与〉

――貴社における取り組みは

当社では社員に、農産物検査員の資格を出来る限り取得してもらっている(23年度の農産物鑑定研修会では、同社製造部の高橋良太氏が優秀賞を受賞した)。仕入れた大豆が等級に合致しているか、目で判断できるようになるためだ。もし品位が悪ければしっかり仕入先に報告することで、より良いものを作ってもらおうと働きかけている。

そのほか、メーカーとの交流会や、生産者には作った大豆がどのような製品になっているのかを知ってもらう機会も提供している。また、「グリーン成長」が掲げられているが、当社は20年に大豆の有機農産物認証を取得した。

有機大豆は収量・品質にブレが生じやすいが、当社の有機認定工場にて調製しメーカーが使いやすい品位に仕上げている。生産者とメーカーの橋渡し役を担い、企業努力で北海道産ブランドの更なる向上に寄与していきたい。

――5年産落札価格・落札率ともに低水準です。

ここ10年で最も低い水準だ。とよまさり特定加工用は輸入価格とかなり近くなっている。北海道に限った話ではないが、前年在庫が残っているほか、品位低下が要因だ。収量は十分だったが、1~3等が少なく特定加工用が多かった。規格外も思った以上に出た。5年産を薄めに手当てして6年産に期待している事業者もいると思うが、もし6年産も同様の品質だったらと懸念もある。

北海道は昨年、気温30度超が20日以上と猛暑日が倍増した。これまで北海道では、低温障害耐性を中心に品種開発が行われてきたが、今後は高温耐性品種の研究が望まれる。6年産については、今年はラニーニャ予報で、今後の天候に注視が必要だ。

――今後の輸入大豆の見通しを

昭和60年代のシカゴ大豆相場は1ブッシェル3ドル台後半~4ドル台を推移していた。ダウ平均や米国の人件費はその頃と比較し3~4倍になっている。世界的なインフレの中で農家の所得も上がらなければ釣り合わない。そのことを踏まえると、現在のシカゴ11ドル相場は当時の3ドル台相当なのではないか。シカゴ相場は今後10ドルを割り込むとの見方もあるが、それは無いと見ている。

そうなると、輸入大豆は国産と比べて安くはない。少しでも国産の割合が増えるよう、当社は北海道で調製加工、販売に励んでいく。

――今後の取り組みと展望について

当社は、北海道産大豆においても複数年契約を取り入れていく。これまでは、国産は収量のブレがあり複数年契約にハードルがあったが、在庫が十分あるほか、国策で大豆生産は減る方向にはないため試行錯誤していきたい。

北海道大豆はショ糖含有量が高くおいしい豆腐が作れる。そして、例えば北海道は飼料の自給率が5割近くにのぼるなど、一次産業は徐々に北海道に集中してくるだろう。今から北海道とパイプを持っておくことをおすすめする。

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

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大豆から作られる食用油や、豆腐、納豆、みそ、しょうゆを始めとした日本の伝統食品は、毎日の食卓に欠かせないものです。「大豆油糧日報」では、発刊からおよそ半世紀にわたり、国内外の原料大豆の需給動向、また大豆加工食品の最新情報を伝え続けております。昨今の大豆を巡る情勢は、世界的な人口増大と経済成長、バイオ燃料の需要増大により、大きな変化を続けております。一方で、大豆に関する健康機能の研究も進み、国際的な関心も集めています。そうした情勢変化を読み解く、業界にとっての道標となることを、「大豆油糧日報」は目指しています。

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昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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