かね善、農産工場での選別・保管技術に強み、大豆はほぼ国産、「丹波の黒大豆」扱う
大阪市東成区に本社を構える食品の総合商社・かね善は、「国内の農業を守りたい」との思いから大豆の取り扱いはほぼ全量が国産だ。
滋賀県栗東市に有する農産工場での大豆加工用途に適した選別に強みを持つほか、人手不足や直面する「物流2024年問題」を見据え、フレコンでの納品にも対応し、トラックドライバーやメーカー側の負担軽減に繋げている。
同社の年間売上高は約200億円で、その3分の1を小豆や大豆など豆類が占める。東北・北陸・関東・関西・九州・香港に拠点を有し、国内と海外へ広く原料供給している。製品にプレミアム感を付与できる「丹波の黒大豆」を扱う数少ない問屋でもあり、同社の東口洋三取締役農産統括は「初めは煮豆メーカー向けが多かったが、現在は豆腐や納豆メーカーなど多岐に渡って納めさせて頂いている」と説明する。
滋賀の農産工場では年間約4,000tの大豆を選別している。各選別機に集塵機を設置し異物排除を徹底、年間を通じて5度以下に保って品質を維持する。安定した品質での供給に盤石な体制を講じており、令和5年産は高温や大雨の影響で品質低下が顕著だが、強みの選別・保管技術で安定供給に資する。
ただ一方で、小粒傾向でもあったことから、「外観を重視する煮豆業界などにとっては調達が深刻だ。4年産で対応するなどの手立てを講じている」(東口取締役)という。
〈「物流2024年問題」に対応、フレコン詰め替えでドライバー・メーカーの負担減〉
穀物業界にとっても大きな課題となっているのが、ドライバーの時間外労働が制限される2024年問題への対応だ。東口取締役は、「当社は北海道など遠方からも大豆を調達しているが、納品される形態は農協ごとに1袋30kg、60kgと異なる。今後、重量の負担が大きい紙袋を荷卸すドライバーは減ってくるだろう」と見通す。
その課題解決の一助として、同社においては工場にてフレコンに詰め替える作業も担っており、要望が増えている。「フレコンならリフトで荷卸しができる。大手メーカーもフレコンを希望する傾向にある。今後、産地側もフレコンが増えてくるとは思うが、現状の入札ロットは30kg、60kgが中心でありまだ一本化されていない」という。
国産大豆の需給動向に関しては、為替の円安進行もあり、「国産大豆へのシフトはかなり感じる。全量を国産に替えることは出来ないが、新商品に国産を採用するなど秋冬商品では国産商品が増える可能性がある。輸入と国産の価格差が小さくなっているなら尚更だろう」との見方を示す。実際、国産で高いシェアを誇る同社にも商品の一部を国産大豆に切り替えたいという要望が寄せられている。
また傾向としては、面積の広さから他の産地よりも供給量・価格的に安定している北海道産を使う実需者がさらに増えていくと見ている。
国産大豆へのシフトの動きがある一方で、5年産入札の落札率・価格は一貫して軟化傾向にあった。「7月の最終入札も低水準のまま終了するのではないか。ここ数年、国産大豆の生産自体が増えていることもあって、これまでよりも繰り越し在庫が多い状況だ。この先更に価格が下がるとの思惑があるのだろう。6年産の生育を見ながら5年産の手当てを判断していると思うが、今年の面積は増えており、現時点で順調に生育している」(東口取締役)ことが要因だと指摘する(取材は7月上旬に実施)。
そのほか国産大豆を取り巻く状況に関して、強みの黒大豆は、面積自体は大きく減っていないものの、高齢化による離農が進み機械化での生産が増えたことで品質面の低下が懸念されるという。
〈大豆油糧日報2024年7月29日付〉