【Jオイルトップインタビュー 佐藤達也社長】創立20周年、チャレンジを促し企業風土変える

J-オイルミルズ 佐藤達也社長
J-オイルミルズ 佐藤達也社長

J-オイルミルズの佐藤達也社長は7月26日、創立20周年を迎えるにあたって東京中央区の本社で合同インタビューを開催した。

業務用のソリューション提案の強みを改めて強調し、3社の統合後の成長については課題が残るとした。統合後に入社した社員が7割近いことに触れ、優秀な社員が多い中、チャレンジを促すことに引き続き取り組み、どちらかというと控えめな文化だという企業風土を変えていくとする。テレビCMで高まった「JOYL」ブランドの認知率は30年には50%を目指す。

佐藤社長は冒頭、「本日まで当社の発展をサポートしてくれたお客さまや製品を購入してくれた生活者など多くの人に支えられてここまで来ることができた。人々の生活に欠かせない油を安定的に供給することで、人々や社会の役に立ってきたと思う。感謝の気持ちを忘れないようにして、ステークホルダーの期待に応えていきたい。創立から今まで、さらにそれ以前に遡って発展に努力してくれた先輩の功績や志を忘れず、責任をもって成長させていく」と述べた。

その上で、「20周年の節目を迎えるにあたり、ここまでの振り返り、できたこと、できなかったこと、やろうとしたことの検証を行い、この先どういう方向に進めたいか社内で落とし込んで形にしていき、どこかのタイミングで発表したい。足元の予算という目標、中期経営計画とは別に、その先に続く道筋を持っておかないといけない」と展望を語った。

〈Jオイルの強みは課題や要望に対し「一緒に試行錯誤できること」〉

改めて同社の強みを問われると、「業務用での顧客接点や技術力、持っている素材を届けて、お客さまの課題や要望に対して提案するソリューションを持っていることだ。具体的な例を挙げると、18年に『おいしさデザイン工房』を立ち上げた。サンプルやアプリケーションを紹介し、一緒に試行錯誤できることは当社の強みで、価値を見出してもらえると思う。マーケティング、研究開発、商品開発を念頭に生産、営業に落とし込みながら総合力を発揮していく。そういったことを『おいしさデザイン』と表現しようとしているが、価値を提供することを武器にしていきたい」とした。

〈コロナ禍からの復活と成長を目指し、復活は遂げたが成長には課題〉

同社の歴史は04年7月1日に、ホーネンコーポレーション、味の素製油、吉原製油の3社が統合してスタートした。「国内市場が成熟していく中で勝ち抜いていくため、国際競争が厳しくなっていく中で、世界に通用するような製油企業になっていきたいという絵を描いていたと聞いている。3社が強みを持ち寄って実現していくことを目指した。規模の拡大の実現や、地域ごとに強い会社が一緒になることにより全国で戦えるようになるなど、さまざまな想いがあったと思う。しかし、目に見えて競争力がついて利益が出たという認識はなく、満足のいくものではないと言わざるをえない。一方でここ数年は、コロナ禍や歴史上なかった水準の相場の高騰などの影響も受けて業績も落ち込んだ。復活させて、成長させることは喫緊の課題だった。復活は何とかできたが成長は足りていない。成長には課題が残っている」と説明した。

直近では04年の統合以降、以前の会社を知らない社員は7割近くになっているという。「社内では統合会社という意識はほとんどない。もっと自由に意見を言って、会社を良くしていく貢献をしてもらいたい。チャレンジするよう背中を押したい。そのためには企業風土をもっと変えていく必要がある。どちらかというと控えめな文化がある。失敗しても会社が許容することを含めて、チャレンジを促すことは必要だ。優秀な人材が多く、スキルがあり、知識が深く、経験も持っているが、覚悟を決めて実行する時には踏み込むことが求められる。これをできるようにすることが社長の役目で、引き続き取り組んでいきたい。人事の仕組みも変えている。今まで若い人が管理職になる年齢が遅かった。意欲があり、仕事ができる人は早く管理職になってもらう。あるいは、もっと積極的にローテーションをかけて、さまざまな職場を経験してもらい、その中で適性を見つけてもらう試みも行っている」と語った。

〈「スマートグリーンパック」「長徳」が好調、国内油脂の依存度減らし次の柱を〉

「JOYL」ブランドについて、「企業広告、『スマートグリーンパック』、業務用のテレビCMを3月から放映した。思った以上に手応えを感じている。『JOYL』の認知率はCMで高まり、それまでの17%から28%に上がった。30年には50%まで高めていく。業務用の商品をテレビCMしたのは初めてだと思う。油問屋に話した際、テレビCMで斗缶が出たのを初めて見た。涙が出たという人が複数おり、うれしく思っている。やってよかったというのが社内の総括だ」と力を込めた。

好調な商品については、「21年に発売した『スマートグリーンパック』は着実に配荷が進んでいる。この秋から品種を増やし、さらに配荷を進めていく。環境配慮や使いやすさ、賞味期限が商品によっては倍になるなどのメリットを伝え、手応えを感じている。業務用の一押しは長持ち油の『長徳』だ。コストコンシャスのユーザーであれば、長持ちするので油の切り替え頻度が減り、人手不足も相まって新規採用は今でも増えている」と強調した。

家庭用の中でもう一つ「ダブルハーフ」を挙げた。「2つの機能をうたっている。油ハネが半分になり、調理後の掃除が簡単になり、後片付けが楽になる。さらにプラスして使用量も半分で済む。コストも削減できて手間も省ける。いい商品だと思っているが、消費者の手元に届く時に分かってもらえていないのが課題だ」とした。

中長期的な課題として、「当社は業界の中で圧倒的に国内油脂事業の依存度が高い。原料相場が突然上がった、為替が変わった際の直撃度が大きく、ボラティリティが高いことから脱却しないといけない。依存度を減らすことが大事で、次の柱を育てていかないといけない。日本は人口が減って高齢化が進む。人々の食べる量は減ることに比例して油の需要も減っていく。海外事業については諦めずに取り組んでいく。新事業で考えた時、例えば飛び地を考えるのか、周辺分野に出ていくのか、どういう素材を使うかなど、さまざまな選択や決定の要素があり、腹落ちできるように社内で決めて判断していく」と見通しを語った。

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昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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