【オリーブ油の市場動向】価格高騰で小容量化・ブレンドタイプの品ぞろえ一層進む、スペイン24年産の生産量150万t以上の豊作見込み、価格水準戻るのは時間かかる

量販店のオリーブオイルコーナー
量販店のオリーブオイルコーナー

オリーブ油の価格高騰により、秋の棚割では小容量化とブレンドタイプの品ぞろえが一層進むとみられる。

オリーブの最大産地スペインが2年連続不作となったことに加え、歴史的な為替の円安も相まって、オリーブ油の価格は引き続き高騰している。スペインの24年産は、2~3月に十分な降雨があり、現在も天候に問題はないようで、150万t以上の豊作が見込まれている。

ただ期末在庫は過去最低水準で、今クロップの生産量が戻っても、減産前の価格水準に戻るのは時間がかかると考えられている。存在感が高まるブレンド油については、仮にオリーブ油の価格が減産前に戻った場合も、一つのジャンルとして定着すると想定されている。

スペインのオリーブ生産量について商社筋は、「過去2年は大減産となった。例年の生産量は120万~130万tだが、22年は約65万t、23年は約85万tだった」と振り返る。ただ、24年産の生産量については、「150万t以上に戻ると言われている。2~3月期の降雨期に十分な雨が降って、実の中で水分が蓄えられた。夏の期間に高温、乾燥に耐えうる良い状況を作れている状況だ。現在も天候については問題ないと聞いている。アンダルシアは日中35~40℃の高い気温で、ところどころ降雨もある。現地情報だと一部200万tまで生産回復する予想との情報もあるが、150万~180万tというのが大勢の意見だ」と説明する。

他の産地の24年の生産量はどうか。「生産量が上昇傾向ではあるが、スペインに比べると振れ幅は広い。トルコは最大60万tまで生産が伸びるとの情報あり。イタリアは例年通りで最大30万t前後と予測される。過去にトルコ産は品質懸念ありという話もあったが、改善傾向にある。一方、トルコは国内企業保護の目的から昨年8月から今年5月まで18kg 以上(バルク)の輸出規制を実施。6月~10月は規制緩和され、合計5万t のバルク輸出が可能となっている」と解説する。

〈大から中・小容量へとダウンサイズ化、1,000円を割る絶対売価を見て購入する傾向に〉

輸入通関を見ると、エクストラバージン(EV)オリーブ油の23年の1kg当たりの単価は969円(22年680円)、24年1~6月は1,574円(23年同期639円)と右肩上がりで高騰している。

オリーブ油の輸入量とEV単価の推移
オリーブ油の輸入量とEV単価の推移

今後の価格見通しについては、「オリーブ油の相場は足元では依然高い水準で推移しているが、上述の通り来クロップは豊作となる見込みが高く、大幅に下がるという現地サプライヤーの意見が多い。ただし、一方で今クロップ期末在庫は過去最低水準となっており、生産量が戻ったとしても、減産前の水準まで価格が戻るには更に時間を要する見込み」(商社筋)。

家庭用オリーブ油の23年度の実績は、製油メーカー推計によると、通期では数量で前期比80%台後半、金額では約110%で着地したもようだ。2月下旬の製油メーカー各社の値上げ発表後、駆け込み需要で3月の数量・金額が大きく伸び、油種カテゴリのトップに返り咲いた。4~5月も特需は続き、金額は2ケタで推移したが、数量は80%を切り、6月は金額も前年を割り、数量は70%台まで落ち込んだ。「g当りの単価は大体1円だったが、現在は3円になっている」(精油メーカー)。

スーパー店頭では、大から中・小容量へとダウンサイズ化が進んでいる。ユニット単価ではなく、1,000円を割る絶対売価を見て購入される傾向が指摘され、小容量や600gでも3ケタでも販売可能なブレンドタイプの存在感が高まるのは必然だ。仮にスペインで24年産、25年産と2年連続で豊作となった場合、価格も落ち着くと期待される。ただ、ブレンドタイプについては、EVの辛味が苦手だという人もいることや、加熱調理でより幅広いメニュー提案が可能なことから、新規獲得が見込める商品として、各メーカーとも一つのジャンルとして定着すると想定している。

購入世帯率50%ほどのオリーブ油は高齢層のユーザーが中心で、若者層の需要獲得が市場拡大のキーだ。販促策では、TikTok やユーチューバーとのコラボといった新しい試みもみられる。一方で価格の高騰により、メインのサラダにかける用途でマヨネーズやドレッシングに流れているという見方もあり、基本的なメニューの訴求に注力する方針も聞かれる。

「スエズ運河については引き続き航海は厳しく、喜望峰回りの航路を進まざるをえず、航海期間の長期化が続いている」(商社筋)。主要産地の減産に加え、地政学的なリスクも顕在化している。人口増による世界的な油脂需要の増加も含め、食料安全保障の観点から、多産地化も業界の重要な課題だ。

候補として、「スペイン、イタリア以外のオリーブ産地ではトルコが注目だ。スペインの減産の影響で他の産地に目を向けるバイヤーが多い。中でも、トルコの生産量が増えることには好意的な意見が聞かれる。豪州、チリ、モロッコについてもヒアリングされることがままあるが、スペイン産比較で価格高く、品質確認にも時間を要するため採用ハードルは高い」(商社筋)。

〈大豆油糧日報2024年8月13日付〉

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

大豆油糧日報

大豆から作られる食用油や、豆腐、納豆、みそ、しょうゆを始めとした日本の伝統食品は、毎日の食卓に欠かせないものです。「大豆油糧日報」では、発刊からおよそ半世紀にわたり、国内外の原料大豆の需給動向、また大豆加工食品の最新情報を伝え続けております。昨今の大豆を巡る情勢は、世界的な人口増大と経済成長、バイオ燃料の需要増大により、大きな変化を続けております。一方で、大豆に関する健康機能の研究も進み、国際的な関心も集めています。そうした情勢変化を読み解く、業界にとっての道標となることを、「大豆油糧日報」は目指しています。

創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
大豆卸、商社、食用油メーカー、大豆加工メーカー(豆腐、納豆、みそ、しょうゆなど)、関係団体、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送 *希望によりFAX配信も行います(実費加算)
購読料:
3ヵ月=本体価格29,700円(税込)6ヵ月=本体価格59,044円(税込)1年=本体価格115,592円(税込)