【工場ルポ】太子食品工業・日光工場、「北の大豆」製造、豆腐は1日29万パック生産

太子食品工業・日光工場外観
太子食品工業・日光工場外観

太子食品工業の日光工場では、主に「北の大豆」シリーズを製造し、豆腐や油揚げ、ゆば、豆乳を生産している。

日光工場は、1998年4月に操業を開始し、敷地面積は2万5,782平方メートルとなっている。第1工場と第2工場に分かれており、第1工場ではカット豆腐、充填豆腐、寄せ豆腐を、第2工場では油揚げ、国産充填豆腐、豆乳、ゆばを製造している。

生産能力は、1日あたり豆腐29万パック(カット豆腐12万パック、充填豆腐17万パック)、油揚げ8万パック、豆乳2万本、ゆば5,000パックとなっている。現在約140アイテムを製造している。大豆処理量は一日あたり20t、日光連山伏流水を一日あたり3,300t使用している。日光に工場を構えたのも、この水のためだという。

豆腐ができるまでの製造工程として、まず大豆を精選・洗浄したのち、浸漬タンクに漬ける。日光工場では浸漬タンク1つにつき、600kgの大豆を漬けることができる。

次に、大豆を磨砕して生呉(なまご)を作ったのち、加熱して煮呉(にご)を作る。このとき、同社では消泡剤を使わないため、豆乳の気泡を抑える気泡除去装置を使っている。

豆乳の気泡を抑える気泡除去装置
豆乳の気泡を抑える気泡除去装置

その後、煮呉を豆乳とおからに分離する。豆腐を作る場合は、温かい豆乳で寄せると肌理があらくなるため、安定してにがりを混合できるよう冷やした豆乳を使用している。

豆腐をパックに詰めた後は、商品をX線異物除去装置で撮影し、異物が混入していないか確認する。きちんと作動するか確かめるため、1時間に1回サンプルを流すという。

豆腐パックをX線異物除去装置で撮影し、異物が混入していないか確認
豆腐パックをX線異物除去装置で撮影し、異物が混入していないか確認

第2工場で製造される油揚げは、油揚用の生地を作ってから揚げる。バケットに入れて油の中に沈めながら揚げる「沈み揚げ」は、振動を与えつつ揚げることで、油揚げを膨らませる。同商品には、栄養面のバランスがよく、酸化しにくいことが特徴の米油を使用している。

〈製造のこだわりは素材のうま味や甘みを引き出すこと、豆乳のおいしさを追求〉

自然で、いつでも同じおいしさを届けるため、同社は原料、製法、安心安全の3つにこだわっている。原料は、産地直送の大豆を使い、豆腐については北海道産大豆を100%使用している。

添加物は、消泡剤や乳化にがり不使用で製造している。他にも、遺伝子組み換え大豆を使わないなど「お客様が不安に思うものを極力使わないスタンス」(北上真吾工場長)を貫く。

製法では、素材のうま味や甘みを引き出すことを心がけている。豆乳固形分は11.5%以上で管理し(国産豆腐)、一気に加熱することで、雑味や不快味を抑える独自製法を用いている。

北上工場長が「豆腐の全ての原点だ。豆乳がおいしくないと、おいしく作れない」と力説するように、特に豆乳のおいしさを追求している。「北の大豆無調整豆乳にがり付き」は、大豆固形分は12%以上と高い一方で、青臭さがなく豆乳が苦手な人でも飲みやすい。

また、「北の大豆生ゆば」は、「北の大豆無調整豆乳」よりさらに濃い豆乳を充填することで、濃厚な味わいの刺身ゆばを楽しめる。豆乳から一度だけ汲み上げたゆばのみをパッケージに詰めている。

安心安全のこだわりとしては、HACCPの手法を取り入れた品質管理を行っている。

環境面では、LNG(液化天然ガス)を使用したコージェネレーション設備を導入することでCO2を年間約7%削減するほか、廃水を浄化施設で綺麗にして自然放流、おからは飼料や肥料へリサイクルするなどの取り組みを行っている。加えて現在、建築廃材チップを燃料とするチップボイラーを導入するための準備を進めている。

廃油回収にも協力し、ジェット用燃料として活用され品質面が評価されているという。

〈ミレニアムCPで充填豆腐が一番売れるラインに、関東での販売拡大目指す〉

2024年3月に就任した北上工場長と、五十嵐年彦副工場長に話を聞いた。

2024年3月に就任した北上真吾工場長(右)と、五十嵐年彦副工場長(左)
2024年3月に就任した北上真吾工場長(右)と、五十嵐年彦副工場長(左)

就任が決まったときの心境についてそれぞれ聞くと、北上工場長は「責任重大だが、押しつぶされないようにしたい。まだ工場長としての役割を果たせていないと感じるが、負けないようにしたい」と話す。五十嵐副工場長は、就任がきっかけで、自分の部署だけでなく他の部署も見るようになったという。「各部署の人手が不足しているところに、もっと人員を配置したい」と述べる。

日光工場で27年勤務してきた北上工場長に、販売商品の変化について尋ねると、「充填豆腐の変化が一番大きい。現在は150g×3パックが一般的だが、日光工場が操業した当時は少なかった」と答える。

同社も当初は120g×2パックで販売していたが、2000年にミレニアムキャンペーンと題し、価格を据え置きで150g×3パックに変更したところ、大きく販売数量を伸ばしたという。「一番売れていないラインから、一番売れるラインになった。当時の充填豆腐のラインは1ラインで、1日30分しか稼働していなかったが、日光工場だけで5ライン構えることになった。その頃から充填豆腐はメジャーになっていった」(北上工場長)と振り返る。

また、当時は酸凝固であるグルコノデルタラクトン(GDL)で豆腐を作るメーカーが多数いた中で、同社は操業当時から「にがり」で豆腐を作っていたという。

今後の展望について、北上工場長は「関東での販売を広めたい。個人的なイメージではまだ(目標の)半分以下と認識している。安売りできる製品ではない。価格面を、味などで認めてもらえるよう、これからも(研鑽を)続けないといけない。営業と工場が一緒になって頑張りたい」と意気込んだ。

〈大豆油糧日報2024年8月26日付〉

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昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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