イトーヨーカ堂、廃食用油の回収拠点を都内全店に拡大、SAF原料の活用も視野

廃食用油の回収拠点、サービスカウンター
廃食用油の回収拠点、サービスカウンター

イトーヨーカ堂は9月から、専用リターナブルボトルを利用した家庭系廃食用油の回収拠点を、都内の25店舗全店に拡大する。さらに2025年までに、全国のイトーヨーカドーとヨーク全店舗まで回収拠点を拡げ、年間で累計25tの回収を目指していく。

回収された廃食用油は現在、廃食用油回収業者の吉川油脂(栃木県佐野市)と連携し、石けんやインク溶剤などの再利用を進めているという。将来的には、ENEOSが27年に和歌山製油所に運転開始予定のバイオ燃料製造設備で、SAF(持続可能な航空燃料)の原料として活用することを視野に入れている。

同社は23年2月から、「イトーヨーカドーネットスーパー西日暮里店」で家庭系廃油を回収する実証実験を開始した。その後、東京都と廃食用油回収促進に関する協定を締結し、都内の3店舗に回収拠点を拡大、12月にはヨーク店舗での回収も始め、回収できる店舗数を増やしてきた。これまでの回収量は、専用のリターナブルボトル約5,400本相当(24年8月時点)に上るという。

イトーヨーカ堂サステナビリティ推進部の小山遊子総括マネジャーは、「家庭系廃食用油は年間約10万tに上るが、回収が進んでいない。脱炭素循環型社会の実現に寄与する貴重な資源として期待されており、この課題に積極的に手を打ちたいと考えた。吉川油脂から提案され、ネットスーパーで実証実験を開始し、東京都の公募に応募し、協定を締結して進めていくことになった」と経緯を説明した。

イトーヨーカ堂サステナビリティ推進部の小山遊子総括マネジャー
イトーヨーカ堂サステナビリティ推進部の小山遊子総括マネジャー

同社や吉川油脂、ENEOSらによる取り組みは、東京都が公募した「廃食用油回収促進に係る事業提案」に採択され、23年12月に協定を締結している。

本取り組みのポイントとして、「専用のリターナブルボトルを使うことでゴミが発生しない。サービスカウンターまたは回収ボックスに持ってきてもらえれば、新しいボトルに交換している。困っていた廃油の処理が手軽にできるようになったと好評で、使用済みの油以外にも中元や歳暮の賞味期限が切れてしまった未使用品の回収といった想定外のこともあり、役に立っている」と強調する。

〈買い物ついでに脱炭素化に取り組める、ENEOSは和歌山でSAF製造を予定〉

吉川油脂の吉川千福社長は、「事業系の廃食用油は年間40万t生じ、約95%のリサイクル率となっているが、家庭系は年間10万t中、4%しかリサイクルが進んでいない。29年前から家庭系廃食用油の回収を提案していたが、なかなか進まなかった。買い物ついでに脱炭素に取り組めることを広く国民に意識を持ってもらいたいと、イトーヨーカドーをはじめ、各スーパーやコンビニに提案している」と述べた。

吉川油脂の吉川千福社長
吉川油脂の吉川千福社長

ENEOSバイオ燃料部の古谷大介部長は、「和歌山の工場では、27年以降に運転開始するバイオ燃料製造装置でSAFの製造を予定している。航空機は電動化するのが難しく、CO2削減にはJET燃料にSAFを有効活用することが重要だ。先月、当社は国内石油元売として初めてSAFを輸入し、日本航空に販売することをリリースしている。家庭系廃食用油をSAF原料への活用は進んでいないため、回収網を全国に展開することがSAFの利用促進を啓発する活動になる」と期待を込めた。

ENEOSバイオ燃料部の古谷大介部長
ENEOSバイオ燃料部の古谷大介部長

なお、同社の和歌山製油所では、廃食用油から9割程度のSAFが製造できると想定している。イトーヨーカ堂が25年に全国の全店舗で計画している回収量25tを飛行距離に換算すると、約3,000km分になるという。

〈大豆油糧日報2024年8月30日付〉

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