【マルコメ・青木時男社長インタビュー】みそ・糀・大豆の3つのコア事業を展開、糀歩合の高いみそはまだまだ伸びる可能性、進化系の商品で新市場を創造
みそ事業だけに止まらず、糀、大豆といった領域で、これまでになかった新しい事業を展開して新市場を誕生させてきたマルコメ。青木時男社長に、市場拡大への意欲、創業200年に向けた取り組みなどについて聞いた。
──掲げているテーマ「持続可能な食の未来を目指して」について
現在の事業テーマはサステナブル。植物由来のみそ、糀、大豆の3つのコア事業を展開することで、持続可能な食の未来を目指していきたい。みそ事業では、「プラス糀生みそ糀美人」「丸の内タニタ食堂の減塩みそ」を開発して、うま味があって甘みのある時代のニーズに合った商品を投下したところ、今や無添加の2トップとなっている。この商品群の登場で、新しい市場を作ったことが、そのままプラスオンとなり、市場をさらに拡大させていく。「料亭の味」ほど売場には入っていないので、糀歩合の高いみそは、まだまだ伸びる可能性を秘めている。
海外では顆粒みそに対する引き合いが強い。みそを知らない人は、和洋中を問わず使いやすい調味料として顆粒タイプを選択する。国内では7月、8月の前年同期比では251%を超え、輸出も167%を超えている。グループのかねさの工場もフル回転で生産しており、かねさのポテンシャルが今の時代に開花したと思っている。
糀事業では、魚沼醸造が核になっている。みそ事業の素はいい糀がいかに作れるか。素材にもこだわり魚沼の環境を使った素材を元に、時代に合うように適応させた、塩糀やしょうゆ糀、糀みつ、甘酒、米糀ミルクなど進化系の商品も生み出し、さらに新たな市場を作り出していきたい。
〈「米糀ミルク」でアジアのコーヒー見本市に出展、創業200年はSDGsからSWGsへ〉
──これからのトレンド、特に期待する商品について
これからは50から60代の富裕層がターゲットとなる。いいものは少しだけで、品質、価値にこだわる層はまだ10年くらいはリターンを望めるのではないか。この層がアンチエイジングを目的に自然由来のいい商品をどれだけ探すか。こうした層はますます増えてくる。
日本では、人口が減る、みそ汁離れ、和食離れと言われているが、外国人が喜んで日本食を食べて、日本の米が認められ、日本の食品の輸出が伸びてきている。
新たな市場を開拓するという意味では、糀みつは2024年に特許を取ることができた。海外のトップシェフへのアプローチも開始している。また、10月9日から東京ビッグサイトで始まるコーヒーに特化したアジア最大のコーヒー見本市「SCAJ」に出展する。グローバルに植物性ミルクは伸びており、30年に5.7兆円に伸長するとも言われ、アーモンドミルクやオーツミルク、ソイミルクなど市場で伸びているが、それぞれにクセがあり、「米糀ミルク」にはクセがない。だからコーヒーの味を邪魔しないのでラテに向いているという評価をいただいている。市販だけでなく、カフェ業界方面の営業にも力を入れていく。これからは新しいカテゴリ自体を作り出していきたいと思っている。
──大豆事業について
大豆事業では、確実にクオリティは上がってきている。当社の開発担当が世界の市場を見て回ってきて、凄いレベルの代替肉に出くわすようになってきた。これにより、似たようなものを作ればいいという状況ではなく、肉を凌駕するような製品が作られ始めている。だから、現状のクオリティをブラッシュアップしていくことが一番近道だ。ニーズが高まった時にそのニーズにマッチできる製品があるかどうかで決まる。ただ、余計な添加物は加えない。ヘルスコンシャスという軸はぶらさずにいきたい。
──SDGsについて
お取引様からマルコメは何をしているのかという問い合わせもあり、ホームページで環境に対する取り組みを紹介している。当社では、SDGsの先にある景色を見据えている。2054年に創業200年を迎える。今回のあおさ事業はブルーカーボンに寄与する事業として、GDPだけではない、生活者の幸福度に貢献できるSWGs(サステナブルウェルビーイングゴールズ)を指標にしている。
〈大豆油糧日報2024年10月10日付〉