【注目のしょうゆメーカーに聞く】伝統的な木桶で仕込み2年ほど熟成、まろかなしょうゆが自慢/笛木醤油

笛木正司社長(右)
笛木正司社長(右)

〈輸出は前期の約5倍に伸長、有機の販売に注力〉

埼玉県比企郡川島町でしょうゆづくりを始めてから235年が経った。笛木醤油は、伝統的な木桶で仕込み、2年ほどゆっくり熟成して造るまろやかなしょうゆが自慢だ。笛木正司(十二代目笛木吉五郎)社長(写真・右)は、脈々と受け継いできた伝統のしょうゆを継承し、発展させながら、次々と新しい事業にも挑んでいる。

「伝統と革新」この両輪で、事業を展開する同社の業績は、コロナ禍の内食需要をきっかけに上昇し、最近ではインバウンドにより外食需要も高まってきたことで、3期連続で増収となった。今期も11月までの半期で3.5%増と業績を伸ばしている。中でも、輸出は今期に関しては前期の約5倍伸びており、有機しょうゆの販売に力を入れていきたいとする。

同社のファン層を増やす試みとして、2019年に建てた体験型のしょうゆパークがある。

「しょうゆパークの目的は、自分たちで作ったものの魅力を伝えるために作った。しょうゆを造っている所を伝えないのはもったいない。今でも、職人が手間暇をかけて昔ながらの伝統的なしょうゆを造っていることをお客さまに伝えたかった」と笛木社長は思いを込める。

しょうゆパークでは、しょうゆに関わりを持つ、「食べる・学ぶ・買う・遊ぶ」ことが体験できる。しょうゆアイスをはじめ、しょうゆのおいしさをだしとともに味わえるレストランでは、川島の米を使った自家製面のうどんが食べられる。また、工房で焼き上げたバウムクーヘンやせんべいに漬物なども購入可能だ。「しょうゆ楽校」では、実際に大豆や麹などを見て触れながら、しょうゆができるまでを学べる。

「年間で4万人が来場される。夏とゴールデンウィークが多く、子供の来場者にはしょうゆ粕を活用した研究を頼むと毎年4~5件は持ってきてくれる。チーズやハムを燻製するために使ったなどといったことを知らせてくれる。新しい商品のヒントにもなる」(笛木社長)。

同社では、2年前から大東文化大学の教授や学生と共同で、埼玉の有機野菜をしょうゆ粕で漬け込んだ漬物を商品化する取り組みも行っており、アップサイクル商品の開発にも意欲的だ。

〈しょうゆの絞り粕の処理に大学やベンチャー企業と共同で取り組む〉

「しょうゆの絞り粕は課題だ。生産量が中堅メーカーの中では多い方なので、産廃に出してしまう。そのため、産廃費用も掛かってしまう。また、しょうゆの絞り粕は基本的に燃やす。そうすると、CO2が排出されてしまうので、しょうゆの絞り粕を使い、環境に配慮した商品の開発にもベンチャー企業一緒にと取り組んでいる」と、環境に負荷がかからない会社を目指していきたいという思いも強い。

235年続けてこられた要因について、「頼まれたらとりあえず何でも受けてきた。地域を大切にすることは、家訓として受け継がれてきた。また、昔は男性社会だったが、当社では、女性を多く採用して、役員4人のうち3人が女性だ。経営企画会議も私以外全員女性となっている。昭和初期から、女性が働きやすい環境を大事にして、パートの女性にも賞与が払われた。男女の賃金差も無かった。倒産危機には、特に女性が踏ん張った」と振り返る。

このほか、売上、粗利益、固定費、営業利益などを全て社員と共有するという。「月ごとに情報を社員と共有することで、『売上が高いのに、なぜ利益がすくないのだろう』と自然と考えるようになる。会社の内情をオープンにすることで高収益な事業構造を作ってきた」と話す。

今後の展望では、輸出を伸ばすことに専念する。フランスや米国に向けて、環境負荷が少なくていい商品を届けたい。国産有機のしょうゆを出荷して、さらに業績を伸ばしていきたい」と強く語った。

〈大豆油糧日報2024年12月25日付〉

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