【新年インタビュー】J-オイルミルズ 佐藤達也代表取締役社長執行役員

J-オイルミルズ 佐藤達也社長

<復活の先にある成長が課題、味の素製油の源流からあと1年で創業200年>

――2024年を振り返って

2021年度、2022年度と非常に厳しい時期を過ごした。2023年度は営業利益72億円と、ようやくコロナ前、あるいは原料相場が大きく上がる前の水準まで回復してきた。当期純利益は68億円と、今までで最高の数字を出せた結果、1株当たりの配当60円と高水準となった。ただ復活はできたが、その先にある成長が課題だ。

インバウンドは活況を呈しているが、事業環境では物流費が大きく上がっていることに加え、エネルギー費の高騰、為替の円安が厳しい環境だ。今年度の第2四半期決算の営業利益は、為替だけで80億円弱の減益要因となったが、ある程度の数字を出せている。原料相場の良化もあるが、いくつかの取り組みが結果を出している。

1つは営業のメンバー一丸となって適正価格販売に取り組んできたことが大きな成果だ。拡販を目指す商品はいくつかあるが、「スマートグリーンパック」の販売は着々と伸びている。「ダブルハーフ」も売れてきており、業務用を含めて市場は縮小しているが、そのような環境のなかで一定の量を確保できている。

構造改革の結果も出た。家庭用のマーガリンと、乳系プラントベースフードの「ビオライフ」を終売した。苦しい決断であったが、これができたのは非常に大きな貢献につながっている。

トピックスとしては、当社が統合して20周年を迎えることができた。改めて当社を支えていただいた皆様に感謝申し上げたい。統合前の3社は長い歴史を持っている。2025年は一番歴史がある味の素製油の源流、熊沢家創業から199年となり、あと1年で200年となる。この歴史は重いと感じており、恥じないようにしないといけない。

2024年3月下旬から4月頭にかけてテレビCMを放映したことなどもあり、ブランドの認知度は確実に上がってきている。一過性で終わるのではなく、継続的な取り組みが必要だ。

<「おいしさデザイン企業」としてソリューション事業はさらに注力>

――2025年の抱負を

2024年度通期の業績は営業利益85億円を計画している。経常利益は95億円と、いずれも過去最高となる。配当は20周年記念配当を加え、70円にする予定だ。ただ、今までの延長でこのまま伸長が続くかというと厳しいと考えざるを得ない。もちろん外部環境もあるが、大きな課題は国内油脂事業への依存度が高いことだ。逆風にさらされた時に、埋め合わせる事業がない。少なからず汎用品が占めており、価格競争にもさらされる。

中長期の成長戦略にはもちろん取り組んでいかないといけないが、今ある事業をどうするかという意味では、差別化できている商品をきちんと販売し、負けないようにしていく。新商品についてもアイデアがあるので投入していく。

業務用は、長持ち油の「長徳」を中心とした独自技術の「SUSTEC」を採用した商品の販売に注力していく。それに加えて「おいしさデザイン企業」として、単に油を売るだけでなく、お客様の課題を一緒に解決することで油を使ってもらい、油以外の当社が持つ「テクスデザイン」のスターチ類も使ってもらえるような提案を行っていく。ソリューション事業はさらに力を入れていく。「おいしさ」、「健康」、「低負荷」についても、他社との差別化ポイントとして取り組んでいく。

――オリーブ油の利益面について

オリーブ油は非常に厳しい時期が2年続いた。オリーブの不作によりオリーブ油の価格が高騰した。買い控えで需要は減り、市場が縮小する中で、当社はかなり先んじて、さまざまなブレンド商品を販売するようになった。お得感を感じてもらいながら、オリーブ油の味わい、香りがする商品を提案したが、手応えを感じている。オリーブ油市場は数量で2ケタ減なのに対し、当社は落ち方がそこまで大きくない。

一方で、利益をけん引する商品だったので、原料価格が大きく上がった時に、利益は非常に厳しくなった。2024年5月から価格改定を発表して原料コストに徐々に追いついてきて、ようやく一息つけるくらいにはなった。

――オリーブ油の領域で今後大切になることは

スペインの生産量は良くなるという話がある。当社は原油を購入し、充填・製造しないといけないため、原料コストが下がっても、実際にその効果が出てくるのは4月以降になる。一方、欧州の完成品を輸入する業者であれば、新しい価格の商品が出てくると、そのまま安価に販売し、輸入品とのギャップが一時的に発生すると思う。その対策としても、ブレンド商品は意味を持つ。また、単価があまりに高いと敬遠されるので、小容量帯にも力を入れて取り組んでおり、これも奏功すると思っている。

――中期経営計画の最終着地に向けて

2025年の課題を話したが、現在の事業構造のままで伸びていくと楽観はしていない。その中で既存事業を強化するという意味では、ひとつは家庭用のさらなる強化を図っていく。業務用は元々自負があり、決して負けてはいけない。ただそれだけでは限界がある。成長戦略にも取り組んでいかなければならない。

成長戦略の中で一番蓋然性があるのは海外事業だと思っている。中計最終年度である2026年度の目標として営業利益110憶円のうち7%を海外から上げる目標も変わらない。既存の海外事業のうち、「まめのりさん」やファイン事業の「ビタミンK2」は安定して伸びているが、これだけでは当然足りない。

他社と違いが出せる当社のユニークさを生かした展開を広げていこうと考えている。油脂に関連するものであったり、スターチでできることを通じて「おいしさデザイン」を海外でも提供する、という絵が描けたらいいが、簡単ではない。

1つは国内で取引しているお取引様が海外に進出した時に、進出先でも取引ができないか、当社が提供しているサービスやソリューションを海外でも使ってもらえないか、といったことも考えている。

加えて海外に関しては、輸出商品を各地域で伸ばしていく。タイとマレーシアの関連会社を伸ばしていくことも考えている。まだまだ規模も小さく、やるべき課題は山積しているが、成長戦略の中の非常に大きなパーツだ。

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

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大豆から作られる食用油や、豆腐、納豆、みそ、しょうゆを始めとした日本の伝統食品は、毎日の食卓に欠かせないものです。「大豆油糧日報」では、発刊からおよそ半世紀にわたり、国内外の原料大豆の需給動向、また大豆加工食品の最新情報を伝え続けております。昨今の大豆を巡る情勢は、世界的な人口増大と経済成長、バイオ燃料の需要増大により、大きな変化を続けております。一方で、大豆に関する健康機能の研究も進み、国際的な関心も集めています。そうした情勢変化を読み解く、業界にとっての道標となることを、「大豆油糧日報」は目指しています。

創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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