【新年インタビュー】昭和産業・塚越英行代表取締役社長執行役員

昭和産業 塚越英行社長

〈1~9月の販売数量は合計108%、こめ油やひまわり油の販売好調〉

――2024年を振り返って

製油カテゴリについて、原料相場は一時期より軟化したものの、大豆・菜種ともに高値圏内で推移し、為替相場は円安進行、加えて物流費や人件費などのコストも大きく上昇しており、2024年後半から採算環境が悪化している。そのため、10月出荷分から油脂製品の価格改定を実施し、適正価格での販売に努めたが、売上高は前年を下回った。しかし、インバウンド需要の回復なども後押しして、当社の1~9月の販売数量は家庭用が135%、業務用105%、合計108%と前年を上回った。

オリーブ油は、継続する世界的な不作により2024年は大幅な価格改定を実施した。健康志向の高い消費者がオリーブ油から他の健康油を求める傾向があり、こめ油やひまわり油「オレインリッチ」の販売は好調だ。オリーブ油を他の食用油とブレンドするブレンド油の新しいマーケットも誕生し、当社「オレイン酸たっぷりのひまわり&オリーブオイル」の販売も好調に推移している。

〈油種拡充、高付加価値商品群の拡売、創立100周年プロジェクト発足〉

――「中期経営計画23-25」の進捗について

2024年度は、5つの基本戦略より特に「〈1〉基盤事業の強化」の「穀物ソリューションの進化」と「〈2〉事業領域の拡大」の「新規事業への挑戦」に大きな進捗があった。

「穀物ソリューションの進化」では、「ワンストップ型営業組織改編の効果」だ。多種多量の穀物を取り扱う当社グループの最大の強みである「多様な事業ポートフォリオ」を最大限に活かすための差別化戦略として、従来の「プロダクトアウト型」縦割り組織を、業態別・顧客別の「ワンストップ型」組織体制に変革してからまもなく2年が経過する。

改編効果が数値として表れはじめており、試算では約3億円の利益効果が出ている。今期は組織改編2年目となるが、今後も成長が期待できる外食市場や中食市場などをターゲットに、ソリューション型の営業スタイルを展開していくことで、まだまだ伸ばすことができると感じている。

「新規事業への挑戦」では、将来の収益基盤となる新規事業として、プラントベースフード事業、オレオケミカル・ファインケミカル事業、海外事業に取り組んでいる。当社グループの既存事業は、ボラティリティが高い商品の割合が大きく、事業環境に左右されやすいという課題がある。その課題を解決し、強固な収益構造を確立するための、将来に向けた取り組みであると考えている。

「プラントベースフード事業」では、2024年8月に新ブランド「SOIA SOIYA(ソイアソイヤ)」の立ち上げを発表し、大豆たん白商品「HMSP」(ハイ・モイスチャー・ソリューション・プロテイン)を発売した。単なる肉の「代替」だけではなく、大豆という「穀物」の可能性を最大限に引き出し、使う人の自由で多様な発想を導き、プラントベースフードの新しい時代を切り拓く。

「オレオケミカル・ファインケミカル事業」では、2024年10月に東北大学発スタートアップ企業ファイトケミカルプロダクツと資本業務提携し、当社グループから発生するこめ油の副産物に先方の持つ反応分離技術を掛け合わせ、穀物の新たな可能性を提供していく。

「海外事業」では、2024年4月にベトナムでプレミックスの製造販売会社「昭和産業インターナショナルベトナム(SSIV)」を新設し、25年度の工場稼働に向けて準備を進めている。ASEAN向け事業の拠点とするなど、さまざまな海外展開が動きはじめている。

輸出についてはポテンシャルを生かしつつある。輸出業務を海外営業部で一元管理することで、より戦略的な取り組みを進めることが可能となり、家庭用天ぷら粉を中心とした拡売も進み、輸出先と商品数の拡大により販売数量は2ケタ増と確実に増えている。

神戸工場にて小麦粉製品のハラル認定を取得したため、今後はイスラム圏への輸出にも注力していく。

製油カテゴリのトピックスでは、相場変動に左右されにくい収益構造構築のため、大豆・菜種以外の油種拡充、高付加価値商品群の拡売に取り組んでいる。ボーソー油脂の子会社化により扱い油種に加わったこめ油、辻製油との資本業務提携によりサプライチェーンがさらに強化されたコーン油などの油種拡充、長寿命油や半流動性油脂などの付加価値油脂、大豆たん白製品などの拡売では、組織改編による提案強化も相まって着実に実績を増やしており、安定収益確保に寄与している。

――新年の抱負・来期以降の見通しと計画を

現在「ありたい姿」として設定している長期ビジョンは25年度がターゲットであり、期限は間近に迫っている。次の長期ビジョンの策定に向け、36年2月18日の創立100周年を視野に入れたプロジェクトが発足している。これからの当社の未来を考えるため、30代の若手を中心にさまざまな部署の従業員が携わり、改めて経営理念や行動指針の再検討など行っている。また、プロジェクトからの発信と併せて、経営者には経営者としての責任があり、会社がどこへ向かって進んで行くのかを示していく義務があると考えている。

従業員に伝えているのは、「『better』(比較級)な存在ではなく、『different』(唯一無二)な存在を目指していこう」、「ユーザーインの視点を持とう」ということだ。「マーケットイン」ではなく、ユーザー、つまりお客様の中の課題解決をしていく「ユーザーイン」を通じて世の中にないものが生まれて、新しい市場を創造できるビジネスモデルにつながると考えている。そして、「穀物ソリューション・カンパニー」として多種多量な穀物を扱う総合力、技術力を活用した製品開発を進め、市場分析を通じ、お客様に当社だからこそできる新たな「価値」を提供する取り組みを続けていく。

同時に、縮小する国内市場に対しての海外展開も必要だ。ゴールイメージは国内で目指している「穀物ソリューション・カンパニー」のビジネスを海外でも展開していくことだ。100周年プロジェクトの提言と経営陣の意見を合わせて、全ての従業員が納得できる目標を決め、90周年、その先の100周年そして、その先へと前進していきたい。

〈大豆油量日報 2025年1月9日付〉

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

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大豆から作られる食用油や、豆腐、納豆、みそ、しょうゆを始めとした日本の伝統食品は、毎日の食卓に欠かせないものです。「大豆油糧日報」では、発刊からおよそ半世紀にわたり、国内外の原料大豆の需給動向、また大豆加工食品の最新情報を伝え続けております。昨今の大豆を巡る情勢は、世界的な人口増大と経済成長、バイオ燃料の需要増大により、大きな変化を続けております。一方で、大豆に関する健康機能の研究も進み、国際的な関心も集めています。そうした情勢変化を読み解く、業界にとっての道標となることを、「大豆油糧日報」は目指しています。

創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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A4判 7~11ページ
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