【新年インタビュー】不二製油 大森達司代表取締役社長

不二製油 大森達司社長

〈ココアバター代用脂とコンパウンドチョコ需要増、チョコ用油脂の増産検討〉

――2024年を振り返って

カカオ豆相場が年初から急騰し、4月に史上最高値を記録したことが大きな衝撃だった。一方で、チョコレート用油脂(ココアバター代替油脂)とコンパウンドチョコレートの需要が増えた。

コンパウンドチョコレートの良さも再認識された。当社は新製品として「スイートチョコレートCP25フレーク」と「ホワイトチョコレートCP07フレーク」のCPシリーズ2品を開発し、6月から拡販を行っている。発売から短い期間にもかかわらず、高い評価を受けた。日経トレンディ「2025ヒット予測100」にも「プレミアム準チョコ」として選出されるなど、注目していただいている。

チョコレートについては、市場でチョコレート製品の価格改定が続いていることから、需要減や量目変更により当社の販売も数量ベースで減少を見込んでいるが、現状、需要は根強いものがある。アイスクリーム用などのコーティングチョコレートの需要が堅調だった。また、観光土産の需要もインバウンドを含め堅調だ。

ただ、流通菓子などをはじめ、これから価格改定を行うところもあり、楽観視はできない。

2025年もカカオ豆相場は高値が続くと予測している。西アフリカでは10月ごろから最大の収穫期を迎えたが、直近の情報では収穫状況が芳しくない。この影響で相場が再び上昇し始めており、カカオ豆の供給は引き続き逼迫する見通しだ。

原料の確保も困難が予想されるため、2025年使用分の確保に全力を挙げている。調達先を広げるなど、従来の考え方にとらわれず原料確保することが最優先課題となる。

カカオ豆の価格が高止まりする中で、当社のチョコレート用油脂の需要が引き続き高水準を維持すると見込んでいる。現在、生産能力はフル稼働の状態だが、増産の余地を検討中だ。工場の生産ラインでさまざまな工夫を行い、需要に対応できるよう生産体制の強化を進めている。

――大豆加工素材事業はどうか

大豆加工素材事業は、粉末状大豆たん白、大豆ミート(粒状大豆たん白)、水溶性大豆多糖類の3つが柱だ。大豆ミート市場は2022年が最も厳しい状況だったが、2023年には若干の回復が見られた。

日本の大豆ミート市場は成長してきたが、現在は若干足踏み状態にある。外食産業の回復が進んでいるものの、消費者の節約志向やメーカーの値上げによる影響で個数や重量が減少するなどの動きが続いており、当社の粒状大豆たん白の販売にも影響している。

当社では、高付加価値タイプの大豆ミート「プライムソイ」シリーズの拡販に注力している。ホテルや回転寿司チェーンなど採用事例が増えている。

また、100%植物由来製品だけでなく、肉とあわせて使うハイブリッドタイプの需要もある。大豆たん白製品も、機能性やおいしさを追求したラインアップを拡充しており、25年も提案に力を入れる。

〈4月から新体制、エリア軸から事業軸へ、賃上げと物価上昇を両立させ利益率向上〉

――「おいしくてわかりやすい」植物性食品の提供を目指す「GOODNOON(グッドヌーン)」ブランドの進展は

「GOODNOON」では、代表商品である豆乳クリームバター「ソイレブール」シリーズ、プライムソイ、植物性ダシ製品「MIRA-Dashi(ミラダシ)」などを展開している。

ソイレブールは引き続き好調だ。23年に発売したシートタイプの製品はコンビニエンスストア向けのパンに採用されるなど、採用が順調に増えている。

当社は2023年に風味基材事業開発部を立ち上げ、植物性素材で動物性食品ならではのおいしさや満足感を実現する「MIRACORE(ミラコア)」技術を活用したミラダシを展開している。

現在は、清湯タイプや白湯タイプ、カツオタイプ、フォンタイプをラインアップしている。ブランドサイトでの情報発信や、セミナーなどを通して認知拡大を図っている。

――乳化・発酵素材でのトピックは

輸入チーズの価格が高騰する中、チーズ風味素材に力を入れている。「本熟製法」のラインを秋から稼働し、本熟製法を活用した製品開発を進めている。

ゴーダやゴルゴンゾーラなど熟成期間の長いナチュラルチーズの風味を持つ製品を実現できる。本熟製法によるチーズ風味素材は、パンや総菜のフィリングに使用されており、本格的な風味を高く評価していただいている。

――4月から新体制に移行する

不二製油グループ本社が不二製油を統合し、商号を不二製油に変更する。これにより、2015年からのホールディングス制によるエリア軸から、事業軸への転換を図る。

2015年からエリア別に権限を移譲し、特に海外市場の成長を目指してきた結果、海外売上比率が日本を上回るまでに伸びてきた。これは、エリアごとに独自の課題に対応できた成果であり、日本市場においても課題に集中して取り組むことで良い結果を得ることができた。

事業別に転換することで、植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4つの事業を軸に、それぞれが国内外を一体運営していく。人材をはじめとする経営資源の一元管理、最適配分を行い、事業戦略を推進・強化する。

――2025年の見通しなど

食品業界において、原材料やさまざまなコストアップが続く見通しで、価格転嫁は引き続き必要だ。

日本の食品の価格は、世界的に見ると安価で、その価値に見合っていない。持続可能性のためにも、賃上げと物価上昇を両立させ、利益率を向上させることが必要だ。

――大阪・関西万博が開催される。貴社の計画は

訪日外国人数の急増が見込まれる。インバウンド対応の製品や海外向け製品のPRに繋げていく。

〈大豆油量日報 2025年1月10日付〉

媒体情報

大豆油糧日報

大豆と油脂・大豆加工食品の動向を伝える日刊専門紙

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創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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