日本豆腐協会が賀詞交換会を開催、伝統を守ると同時に付加価値のある豆腐製造方法を検討
日本豆腐協会は14日、新年研修会・賀詞交換会を都内で開いた。
冒頭、三好兼治会長があいさつした。まず、豆腐を取り巻く環境について説明した。
豆腐製造事業者数は2年前に5,000軒を切った。昨年3月末には4,272軒となっており、前年比では327軒のマイナスとなる。最も多かった昭和35年(1960年)の5万1,596軒から92%の減少となっている。これは、「豆腐の製造作業や時間が厳しく、価格の低迷から利益も得られないことから、事業の継承者が育たないことが最も大きな要因だ」と推測している。
単価では、令和3年は60.87円に対し4年は62.11円と2%の上昇となった。「ただ、2004年の90.2円に比べると32%も下落しており、以前の価格に戻るにはかなりの労力と時間が必要になるかと思われる」と述べた。「昨年は値上げが一服した感のある年だったが、価格転嫁していく中で豆腐の価格が上昇しない。当協会としても、農水省と協力しながら価格の適正化に果敢に取り組んでいく」と意気込んだ。
また、「わが国の豆腐は、全国のいろいろな地域に根ざした豆腐が作られている。それらの伝統を守ることも我々の役割ではないか。さらに、街店がだんだん少なくなっていき、手作りの伝統も失われていく危機感がある。これらは、わが国の伝統として何としても守っていく必要があると同時に、どうやったら付加価値のある豆腐を製造できるかといった検討も行う必要がある」とした。
そのほか、アメリカ大豆輸出協会と共同で大豆の品種やたん白質の研究も進めているという。
〈米国品種と交配した多収大豆品種「そら」シリーズ、本州のほとんどの地域をカバー〉
賀詞交換会では、全国豆腐連合会の東田和久会長が乾杯のあいさつを行い、「豆腐はいつまで価格の優等生をやっているのだろう。今年は巳年でもある。皮を剥いて、優等生を卒業するのも手だと思う。共存共栄を頭に置いて、前を向いて進んでいきたい」と語った。
中締めを行った日本豆腐機器連合会(豆機連)の川西聡一郎会長は、「中小企業庁で省エネに関する補助金制度を開始している。期間は今年3月から来年9月までだ。省エネや省人化に貢献する機械なら補助金を受け取れる」と説明した。ただ、個々では受給がしにくいことから、豆機連では、補助金を受け取りやすい仕組みづくりを行っていることを紹介した。
新年研修会では、農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究部門畑作物先端育種研究領域の平田香里主任研究員が、「米国多収品種を交配母体とした多収大豆品種の育成について」と題して講演した。
農研機構では、国産大豆の生産性を上げるためには単収の増加が必須ととらえ、高品質な多収大豆品種の育成に取り組んでいる。大豆の単収を国ごとに比較すると、米国とブラジルはともに10aあたり345kgに対し、日本は同169kgにとどまっている(国際食糧農業機構調べ)。
米国品種と国内品種の違いは、サヤ数と一莢(いっきょう)内粒数の多さだ。米国品種は百粒重(種子の大きさ)が小さく、たん白質含有量が低い傾向にある。ただ、フクユタカと比較すると、サヤ数は2倍以上、一莢内粒数も約1.3倍となっている。そこで、米国品種を交配し、選別することで多収品種を育成した。
農研機構では、各地域に向いた多収の「そら」シリーズ4品種を開発した。そらひびきは、東北南部から北陸地域向け、そらみずきは関東から近畿地域向け、そらたかくは東海から九州地域向け、そらみのりは東海から九州地域向けだ。この4品種で本州のほとんどの地域での栽培をカバーできる。サヤがはじける性質である裂莢性は難で、葉焼病に対する米国品種由来の抵抗性を持つことが特徴だ。現地試験において、標準品種対比120%以上の多収性を確認している。豆腐加工適性はいずれも好適だった。これまでは硬さを重視し、たん白質含有率が高い(42~43%以上)品種を育成してきたが、今後はたん白質含有率の目標値の設定の見直しや、硬さ以外の豆腐加工適性関連形質の研究にも取り組んでいきたいとの方向性を示した。
〈大豆油量日報 1月16日付〉