セブン&アイ、家庭の使用済み油を航空燃料に、コンビニと居住区での回収は国内初
家庭で使い終わった食用油が、航空燃料として再利用される未来が現実に近づいている。セブン&アイ・ホールディングスは15日、千葉県松戸市のセブン‐イレブン店舗やタワーマンションで、家庭の廃食用油を回収し、持続可能な航空燃料(SAF)への活用を目指す新たな取り組みを開始した。
セブン&アイ・ホールディングスは同日、千葉県松戸市の「セブン‐イレブン松戸常磐平駅前店」で、「家庭系廃食用油を活用したSAF導入推進に向けたサプライチェーン構築事業」の説明会を行った。
同事業は、千葉県の公募事業にセブン‐イレブンやイドーヨーカ堂など7社の連携スキームが採択されたもの。県内のイトーヨーカ堂2店とヨークマート1店、セブン‐イレブン2店、タワーマンション3棟で廃食用油を回収し、SAF向けサプライチェーン構築を目指していく。なお、コンビニと居住区における家庭用廃食用油の回収を行う取り組みは国内初だという。
集めた廃食用油は当面、バイオディーゼル燃料の製造に活用される。2027年に稼働を予定するENEOSの和歌山県の工場完成後は、製造されたSAFを、成田国際空港に供給していく考えだ。
同事業は、千葉県が公募した「千葉の地域資源を生かしたSAF導入促進事業補助金」に採択された。参画する7社の役割だが、廃食用油の回収は、セブン‐イレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂が店舗で、三井不動産レジデンシャルがタワーマンションでそれぞれ行う。廃食用油回収業者の吉川油脂が廃食用油の回収・運搬・リサイクル・ENEOSへの引き渡しを行い、野村事務所が回収を取りまとめる。ENEOSは2027年以降、廃食用油からSAFを製造し、海外へ販売するほか、海外からのSAFの輸入を担う。同社は2027年に和歌山県の工場で年間40万L規模のSAF製造を開始する予定だ。三井住友銀行はプロジェクト全体をコーディネートする。
同事業は1月15日から3月14日までで終了となるが、7社で9月30日まで実証を続けるという。その後、継続や拡大を検討していく。千葉県からは回収ボックスや専用ボトルの費用、販促費の50%の補助を受ける。
〈回収量の目標はセブンが1日10人参画、イトーヨーカドー幕張店では月200本〉
店舗での回収にあたっては、専用のリターナブルボトル(750ml)を用意し、回収ボックスを設置する。「イトーヨーカドー幕張店」では、投入後に新しいボトルが出てくる自動回収機も設置する。
回収量の目標について、セブン‐イレブンでは、1日10人の参画を目標にする。フライヤーの廃食用油の回収頻度に合わせ、月2回の回収を予定している。イトーヨーカ堂サステナビリティ推進部の小山遊子総括マネジャーは、「『イトーヨーカドー幕張店』は月200本、『ヨークマート成田店』では月30本を目指す」と述べた。タワーマンション3棟には約2,000世帯が居住しており、全世帯への取り組み周知を図るとしている。コンシェルジュによるボトルの回収や交換も受け付ける。
食用油の国内消費量は年間約250万tで、そのうち家庭用の廃食用油は約10万t発生する。だがリサイクル率は1~2割と低く、約8万tは家庭ごみなどで捨てられているのが現状だという。セブン‐イレブン・ジャパンの吉田希実枝サステナビリティ推進室統括マネジャーは、「家庭から出る廃食用油の資源循環は社会的にも意義のあること」と強調した。
なお、イトーヨーカ堂は2024年9月、家庭系廃食用油の回収拠点を都内の25店舗全店に拡大した。さらに2025年までに全国のイトーヨーカドーとヨーク全店舗に回収拠点を設け、年間で累計25tの回収を目指すと発表している。小山総括マネジャーは都内での回収の手応えについて、「油の処理に困っていたという声が多く、好評だった」と話す。
(大豆油量日報 1月17日付)