天ぷら屋の新規開拓目標、すでに半分達成 油問屋・島商の提案型営業とは

島商 島田豪社長
島商 島田豪社長

油問屋の島商の今期(5月期)は売上、利益とも好調に推移している。今期から始めた天ぷら屋の新規獲得目標20件のうち、すでに半分をクリアし、紹介による飲食店との取引開始やアジアへ輸出している加工品への油の採用も進んでいる。

島田豪社長は営業社員に、一歩踏み込んだ提案をすることを指示しているという。イタリアンレストランにこめ油、そば屋にコーン油など、より安価な油が欲しいという顕在的なニーズではなく、おいしさを追求したいという潜在的なニーズに応える提案事例が増えている。今期の取り組みと油問屋業界の課題を聞いた。

島田社長は「常に新規を獲得する活動をしており、営業社員全員が攻めている」と強調する。ここ数年は中規模な取引先の獲得が続いたが、今期は比較的小規模な飲食店が紹介で増えているという。ある取引先へは、アジアへ輸出する加工品用の油が伸びている。

島商の営業は現在、島田社長と役員の営業部長、2人の係長に加え、新規採用した社員が新規開拓に力を入れている。6月に定めた天ぷら屋の新規獲得目標の20件は、すでに半分を達成済みだという。「天ぷら屋同士で島商の情報を共有しており、連絡をもらうケースも多い」と話す。

この目標制度は今期から新たに始めたものだ。「営業で話し合って目標を考えるように指示した。最初に出てきたのは4件だったが、それではすぐに達成できるので考え直すように言った。10件ほどで出し直してくると思っていたら20件と言ってきたのでホッとした」と振り返る。

営業部長はベテランで、係長2人も10年以上の経験を有する。「ノウハウを持っているので、一歩踏み込んだ話をするように言っている。表面化したニーズは、いい油を手頃な価格で欲しいというものだ。隠れたニーズとしては、おいしさを追求したいと考えている」と説明する。

2つの事例がある。イタリアンレストランから、オリーブ油が高騰して困っていると連絡があった際、「普通はメーカーや品質、輸入国別に複数のオリーブ油のサンプルを持って値段を提示し提案するが、それではつまらない。高騰はまだ1年以上続く見込みなので、オリーブ油の使用を止めることを提案した。こめ油なら半分の価格で済む」と島田社長は話す。

そのイタリアンでは、ガーリックオイルやドレッシングなどにオリーブ油を使っているが、こめ油でもそれらをおいしくすることは可能だという。パスタやフリットもオリーブ油からこめ油に切り替えることを提案した。

島田社長は、オリーブオイルソムリエの資格を持つ。「エキストラバージン(EV)オリーブ油はわれわれの専門だ。安価なものではなく、風味豊かで素材の味を生かすもの使うことを提案した。例えばパスタをこめ油で絡めても、仕上げに品質の高いEVオリーブ油をかけると風味が良くなる」と解説する。

2つ目は、そば屋への提案だ。紹介を受けたそば屋は天ぷらを大豆油で揚げていたという。「そばはおいしいが、天ぷらはいまいちだった。久々に駄目だししてしまった。価格は上がるがコーン油を提案すると、よりおいしくなったと切り替えてもらえた」と述べる。

〈物流課題はネットワークを常に築いて対応、ピロー提案は労働環境改善に〉

やはり物流は課題だという。「昨年から規制や条件見直しの要望が出ている。年末も遅延が多かった。以前なら受け取り時に不在でも納品してくれたが、翌日納品になったケースもある。新規登録ができないことや、人手不足のため納品できないと断られることもある。

小口配送は5缶以上にして欲しいと言われる」といった変化について話す。同社では取引先や委託先の帳合で運んでもらって対応するなど、「ネットワークを常に築いている」と対応策を語る。

容器提案も課題だ。「ピローはあるメーカーで販売量のシェア20%を超えているが、当社は1%ほど。歩留まりが良く、労力も減ると提案しているが、斗缶を好むユーザーがまだまだ多い。環境問題や労働問題があり、ピローの提案を頑張りたい。物流でも16.5kgの斗缶より12kgのピローの方がハンドリングしやすくなり、労働環境改善にもつながる」と利点を語る。

〈大豆油糧日報 3月10日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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