【役員インタビュー】日清オイリオグループ・三枝理人取締役専務執行役員食品事業本部長

日清オイリオグループ 三枝理人専務
日清オイリオグループ 三枝理人専務

◆ピロー容器拡大、卸店の課題に着目、価格改定の丁寧な説明で適正価格の販売維持

――前期(3月期)の総括を

業務用の販売状況は、適正価格での販売に注力するとともに、顧客の課題をソリューションする付加価値型商品の提案を強化した。「日清スーパー長持ち油」や「日清吸油が少ない長持ち油」など差別性のあるフライ油をはじめ、調理シーンでの作業性改善やメニューの品位向上に繋がる炊飯油、麺さばき油などの機能性油脂の拡販に取り組んできた。

特に業務用領域の戦略商品として位置付け拡販しているピローの包装容器は、これまで中食業態が販売の主体だったが、ここ数年は大手外食ユーザーや業務用卸店での販売も広がり始めている。当社業務用のパッケージ品に占めるピロー容器の割合は25%以上に達しており、手応えを感じている。当社調べによると、外食企業上位100社のうち16社が、量販店総菜の上位100社のうち57社がピロー容器を使っている。今後は人手不足が深刻な課題となる外食店舗に作業負荷低減提案を推進していく。

業務用トータルの販売量は前年度を超えて着地する見込みだが、従来から続く人手不足の慢性化、光熱費や物流コストの上昇もあって外食経営を取り巻く環境は依然として厳しい状況である。そうした中、4月1日から昨年12月末の販売価格に対して11~19%の価格改定を、昨年10月からの価格改定を含んでお願いしている。現時点では加工メーカー向けは段階的に浸透しているが、今後はパッケージ品を中心に粘り強く丁寧に説明を重ね、お客様のご理解をいただき、適正価格の販売を維持したい。

今年度は当社商品を末端ユーザーへお届け頂いている卸店様が抱える物流課題や営業課題にも着目し、販売しやすい環境を作っていく。

――卸店の課題について

1つは物流課題だ。配送トラックやドライバー不足によって、納品先への制約が大きくなってきている。手間がかかる効率の低い納品先を卸店が選別している。斗缶販売時の負荷となるトラックの積み込み作業、空き缶回収、サビや凹みの返品リスクを、ピロー容器への切り替えによって軽減していけると考えている。

人手不足によって営業活動が時間的に制約されている問題に対しては、デジタルマーケティングの活用によって、商品の情報発信やサンプリング、ユーザーの評価、卸セールスとの連携までのプロセスを効率化して課題解決に寄与する。社員教育の負荷に対しては、当社の「業務用お役立ちサイト」のコンテンツを活用した勉強会などで、油脂販売スキル向上に寄与する活動も行っている。

◆オリーブ油は3タイプ生かし販売量の再拡大、家庭用は共通課題として3つの穴提起

――家庭用については

2024年度の全体感としては、汎用油の苦戦をこめ油を含む付加価値型でカバーした構図となっている。だが、付加価値型もオリーブオイル、サプリ的オイルの特殊事情による薄氷を踏むような危うい状況で、当社としては相当な危機感を持っている。

特に2022年度以降、物量市場が急激に縮小している。2022年度比で2024年度は91.2%と減少しているのは大きな問題と捉えている。確かにオリーブオイル高騰の影響もあるが、クッキングオイルで見ると、2022年度比96.1%、汎用油も94.9%だ。価格と量のトレードオフの関係が比較的濃いとされている同カテゴリにおいて、単価が大きく下がったにも関わらず物量が回復しないということは衝撃的であると同時に、皮肉にもここまで当社が取り組んできたクッキングオイルの構造改革の必要性が証明された結果とも言える。

物価高騰によって生活者の節約志向の高まりは当然のこと、物を見る目が一段とシビアになっており、単に安いからといって飛びつくわけではない。「日清ヘルシーオフ」やこめ油の伸長に裏付けられるように、機能や特徴に納得性がある商品を適正価格で販売することに注力すべきだと思っている。

――オリーブ油の販売戦略を

2年連続の大不作となっていたスペインは、24/25年のクロップは降雨に恵まれ、不作前の水準近くまで回復が見込まれ、価格も下落傾向にある。ただ期末在庫の水準は低く、エキストラバージンの品質が芳しくないため今後も注意が必要だ。

イタリア産は裏年にあたることに加え、降雨不足により過去5年間で最低水準だ。23/24年と比較して約3分の2に減産が見込まれ、価格も高止まりしている。新穀のコスト反映は一般的には初夏頃と考えられ、地政学的な問題や為替の影響も含め当社も検討段階だ。

25年度販売戦略としては、「BOSCO」、日清ブランド、ミックスタイプの異なる3タイプを生かし、多様なニーズに対応することで販売量の再拡大を図っていく。

――今年度の重点方針は

家庭用食用油市場は危機的な状況にあると考えており、今後の継続的な市場拡大のためにも、2025年度は非常に重要な年だ。まずは取引先の流通企業にも、当社の視点や考え方を共通課題として認識してもらうことから始めている。「春のプレゼンテーション」ではやや強い表現だったが、3つの穴と表現して提案した。

1つ目のクッキングオイルの穴だが、汎用油は日替わりでいくら安売りしても期待できる販売量を獲得できないことが既に実証済みだ。好調なこめ油まで売価を下げることになってしまう。

2つ目のオリーブオイルの穴については、納入価格が下がったことをいいことに安売りを行えば、売価が戻ってもユーザーが戻らなくなってしまう。市場は24年度(4~2月)の物量が74%で、金額が108%で推移している。この数字をよく考えた上で、目指すべき量とそれを達成できる価格をコントロールしなければならない。

3つ目がアマニ油の穴で、メディア露出による一時的な拡大でベースは広がっているものの、物量・金額で前年を超えていくのは厳しい。

3つの穴を踏まえた上での販促計画を立てる必要がある。

〈大豆油糧日報 4月24日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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