【役員インタビュー】J-オイルミルズ・松本征之常務執行役員CCO

◆オリーブ油の重量・金額シェア伸長、業務用は高付加価値商品の積極的な拡販
――2024年度(3月期)の総括を
家庭用油脂は、物価高騰による節約志向の高まりや外食回帰の影響、オリーブ油の値上げによる需要減少などにより重量市場は縮小し、販売量は前年同期をやや下回った。汎用油の販売量は前期と同程度だったが、販売単価の下落により売上高は前期を下回った。価格改定は昨年10月以降、継続して取り組んでいる。
一方、オリーブ油は主原料コストの著しい上昇に伴い、昨年5月から価格改定を行った結果、需要は市場全体で減退したが、金額市場は前期から拡大した。当社は重量、金額ともに市場シェアを大きく伸ばし、前期を大きく上回る売上高となった。
環境負荷の低減やお客様の使いやすさが特徴の「スマートグリーンパック」シリーズは、各種トライアルキャンペーンを積極的に展開したことが奏功し、店頭回転が大幅に向上した。前期を大きく上回る売上高となり、当社製品の差別化に貢献している。
業務用油脂は、節約志向が見られたものの、外食市場の回復に支えられ、販売量は市場の動きに合わせて堅調に推移している。売上高は、大豆や菜種などの原料相場の不安定な動向や為替相場の乱高下が顕著な中、物流費、エネルギーコスト、人件費などのインフラコストの上昇を鑑みた価格改定を発表し、昨年10月から鋭意取り組んだが、販売単価が前年比で低下したことから減収となった。
物価上昇による食材コストの上昇や深刻化する人手不足の課題に対し、品質の劣化を抑えて長く使える「長徳」シリーズや調理・作業の時間や負荷を軽減する調味油、調理油の「JOYL PRO」シリーズなど、機能性を強化した高付加価値商品の積極的な拡販に努めた。
――昨年10月と5月からの価格改定について
家庭用では昨年10月の価格改定は実勢化に時間を要している。インフラコストと足元の油脂コスト高騰の状況から、お客様に対し改めて理解を求めている状況だ。5月からの価格改定については、昨年10月からの改定と合わせてアナウンスを実施しているが、未だ先行き不透明な状況だ。
業務用の昨年10月の価格改定は、バラに関しては概ね予定通りで決着している。4~6月についても価格交渉中だが、概ね改定への理解をいただいている。斗缶については10月からの改定分に遅れが生じており、道半ばといった状況だが、家庭用と同様、インフラコストと足元の油脂コスト高騰の状況から、改めて理解を求めている。5月からの価格改定は、昨年10月からの改定と合わせてアナウンスを実施しているが、未だ先行き不透明な状況だ。
◆「おいしさ×健康×低負荷」の活動推進、「スマートグリーンパック」配荷拡大
――業務用のシェア拡大に向けた戦略について
「おいしさ×健康×低負荷」で、サステナブルな社会の実現に向けた活動を推進することで、結果シェア拡大に繋がっていくと考えており、着実に成果が上がっている。独自の長持ち技術SUSTEC(サステック)を活用した「長徳」シリーズ、プロのためのおいしさデザインオイル「JOYL PRO」シリーズなどの高付加価値品を軸に、メニューの品質向上と食材コストの上昇や作業性など、お客様の負荷軽減につながる提案活動を実施している。
「長徳」シリーズは、原材料調達から生産・流通・使用・廃棄までのライフサイクル全体で約2割のCO2削減効果が認められ、主力製品でCFPマークを取得し、サプライチェーン全体でCO2削減への関心が強まる中、低負荷を実現する業務用フライオイルとしての提案を進めている。(次面に続く)
米の価格高騰を背景に炊飯油の提案を、バターの高値継続を背景にバターフレーバーオイルシリーズの提案を強化し採用が広がっている。
――上期以降の重点施策と新たな取り組みは
家庭用では「スマートグリーンパック」シリーズの配荷拡大に取り組む。テレビCMなどによるトライアルを促進し、店頭回転の向上を図る。市場拡大が継続するこめ油は、新製品で新規顧客を獲得し、更なる市場拡大を図る。
業務用は引き続き、お客様のニーズの対応した提案活動を推進する。フライ油では SUSTECを活用した「長徳」シリーズの長持ち機能の訴求を強化する。フライオペレーションの改善提案と合わせて、さらなる長持ち提案を進めることで、食材高騰下におけるコストダウンだけではなく調理現場での作業負荷軽減に繋がり、一層お役立ちできると考えている。
調味・調理油でも、コスト高や素材品の供給不安が続く中、「JOYL PRO」シリーズを活用したお客様のメニューや最終商品の品質向上、コスト低減の提案を強化していく。
〈大豆油糧日報 4月25日付〉