受託給食企業4社による保育園給食の取組み/日本給食サービス協会主催セミナー(5)
近年、幼稚園・保育園施設の受託を多くいただくようになり、より高品質な給食を提供するため、保育園・幼稚園専門の支社として、CC支社(チャイルド・ケア支社)を首都圏に発足した。専門の支社を配置することで、より専門性の高い対応を可能にした他、保育園給食のための調理法研究やアレルギー対応研修など様々な研修を行っている。
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〈給食を良くするCC支社の様々な取り組み〉
CC支社では、基本調理研修や離乳食研修、アレルギー研修、共通して使用する食育の媒体作成等を行っている。例えば、基本調理研修の切り方マニュアルでは、調理法によって異なる食材の切り方を、主要食材全て、写真付きでマニュアル化している。食材、切り方、サイズを明確にすることで、いつ、誰が厨房に入っても、同じ切り方で統一できるよう工夫している。
調理マニュアルでは、おいしさが引き立つ下処理法やきれいな焼き色がつく加熱温度などを具体化させ、写真を豊富に用いて分かりやすさにこだわっている。スチコンを使った料理別の温度・時間の一覧表も作成している。こうした細かい下処理からマニュアル化することで、どの店舗でもクオリティの高い料理を提供することが可能になった。
離乳食研修では、保育園給食が初めての人でもすぐに実践できる手引き書を作成し、配布している。中期・後期・完了期のそれぞれの時期で求められる硬さ・大きさを食材ごとに、同時に軟らかく調理する方法等について詳細に解説している。
CC支社では食育の媒体を手作りし、各店舗で共有しながら、それぞれの栄養士が食育を行っている。
例えば、「大豆」の食育では、大豆の“ 変身”をテーマに、大豆から様々な食品ができていることをクイズ形式で紹介している。月に1度は、絵本に出てくる料理や食べ物を給食に取り入れる「絵本給食」も実施しており、絵本に出てきたメニューにワクワクしながら待つ子どももいれば、苦手な食材も、絵本に出てきたものなら食べてみたいと、苦手克服の手助けになることもある。栄養面だけでなく、食事の楽しさや豊かな心を育てる給食の提供を目指し、季節の行事に合わせた行事食や郷土料理の提供など、食育とは心を育てるという認識のもと、様々な食文化の体系を積み重ねる給食を実施している。
〈「本物の味」の提供で育む「食べる意欲」〉
次に、当社の考える「本物の味」について説明する。
素材本来の持つ繊細な味を生かすため3つのことを心掛けている。1つ目は旨みだ。下処理や加熱の際に出たエキスや野菜くずは無駄なく調理に使用している。野菜から出るエキスは最大の調味料であり、そのエキスを最大限に生かした調理法を研究し、全店舗で共有し、調理を行っている。2つ目は水分だ。例えば、いもに熱を入れる時、茹でる調理法が一般的で時間もかからないが、当社ではスチコンを使用する。いも本来の鮮やかな色を生かし、旨みや甘みが増す。栄養価も逃すことなく、素材本来の味を引き出すことが可能である。3つ目は無添加だ。化学調味料を使用せず、だしをしっかり取ることで、風味や旨みが豊かになり、塩分を抑えることも可能だ。このように、当社は旨み、水分、無添加の3つを心掛け、素材本来の繊細な味を壊さない調理法で給食を提供している。
我々は、「本物の味」を知ることは、食べる意欲を生み、生きる力の基礎を育むことだと考えている。また、将来を担う子どもたちの体と心の健康管理をすることは社会貢献にもつながり、無形文化遺産にも登録された日本の食文化をこれからの世代に継承することは、食に携わる我々の責務であると考えている。「お客様に喜びと感動を、社会に貢献を」。
社訓にこの言葉を掲げ、私たちは子どもたちの心と体を育てる給食をこれからも提供していきたいと考えている。
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