インタビュー 2017年のRTDを振り返る②宝酒造酒類事業本部商品部 大谷文久蒸留酒グループ長

今年ソフトアルコール事業の基幹商品である「焼酎ハイボール」ではCVS ユーザーのストロングニーズに対応した「濃いめ」を発売。ガス圧を高め爽快感をより一層強調し、若年層から支持されている「強烈」シリーズを拡充するなど、進取果敢な動きを見せた。

また、新ブランドRTD 商品としては高価格帯のブランドとなる「寶CRAFT」シリーズを立ち上げ、クラフトビールの様にこだわりを持った「クラフトチューハイ」市場の創造・拡大を図る。

市場の大きな部分を「宝酒造らしく」攻め続け、さらに新たな市場の創造を目指す同社のRTD 戦略について、同社酒類事業本部商品部の大谷文久蒸留酒グループ長に伺った。

――「焼酎ハイボール」は今年も好調だったとのことですが。

当社のソフトアルコール事業の大きな柱のひとつである「焼酎ハイボール」については1~10月で、前年比20%増を超えてきている。ビール類ユーザーの流入状況を考えるとまだまだ伸びしろはあると思う。

焼酎ハイボール

宝焼酎をベースとした辛口の味わいや大衆酒場の世界観といった他社商品とは全く違う“唯一無二”の価値観を創造。「焼酎ハイボール」史上最強のガス圧にした期間限定の「強烈」シリーズの貢献もあり、20~30代の新規ユーザーも獲得できている。また、1本当たりの購入量が増えていることや500mlの販売量が増えていることを考えるとユーザーのファン化が一層進んでいると考えている。

また、今年発売した「濃いめ」(セブン&アイグループ限定)シリーズは、手軽に酔えるアルコール分9%と「焼酎ハイボール」特有の後味のキレの良さを持ち合わせた商品。“しっかり酔えて”“ごくごく飲める”という商品特長で、一人暮らしや単身赴任の男性を中心としたCVS での「都度買い」需要に応えていきたい。

また「焼酎ハイボール」シリーズと同様に当社の柱である「タカラcanチューハイ」シリーズは、昨年アルコール9%の「ドライ」を発売した裏だが前年比100%ほどで推移しており、引き続きCVS やSM、交通機関等での育成に努める。

――新シリーズ「寶CRAFT」について詳しく教えてください。

今年発売した「寶CRAFT」はこだわりのご当地素材を使用し、当社独自の樽貯蔵熟成酒や技術で丁寧に仕上げた、ご当地の食の嗜好性にぴったりな地域限定チューハイだ。当社らしくお酒としての味わいを追求した。クラフトビールで評価されている個性や希少性、こだわりという価値をチューハイに付加した商品。

寶CRAFT

開発については管轄する地域の支社主導で行っており、ラベルデザインや味わいについても支社がイニシアチブを持って開発を進めている。ご当地の方々の目線に立って、ご当地の方々のニーズをとらえ、愛飲され続ける商品を開発し、育成していく。

「ご当地の食の嗜好性」にマッチさせた商品であり、ターゲットとした料飲店での採用も多い。栃木県内で多く販売されている「栃木ゆず」はご当地の名物「餃子」に合う味わいが好評で、宇都宮市の有名餃子店で愉しんでいただいている事例もある。

地域限定商品の為、「お土産需要」もあり、京都を中心に販売されている「京都ゆず」はインバウンド需要の様な消費も見られているが、あくまでもご当地の方に飲み続けて頂く商品ということが重要だと考えている。現在5商品(栃木ゆず、静岡産三ケ日みかん、九州レモン、桜島小みかん、京都ゆず)を展開しているが、我々の想定を上回る売れ行きを見せている。今後シリーズ拡充を検討していくつもりではあるが、素材を探しながら一つ一つ地道に丁寧に進めていくというスタンスで、「47都道府県すべてカバーする」という考えはない。

――9月には宝焼酎「レジェンド」を用いたRTDも発売しました。

同商品は樽貯蔵熟成酒を20%使用した宝焼酎「レジェンド」をベースに、炭酸で割ったシンプルなRTDだが、樽貯蔵熟成酒ならではの深いコクと食事に合うスッキリした口当たりがユーザーに受け良いスタートを切っている。

ユーザーの流入は2方向あり、1つは「焼酎のうまさへの期待」と、もう1つは「ウイスキーハイボールの苦みや後切れへの不満」。「樽貯蔵熟成酒」を価値と捉えるユーザーが増えてきており、そういった方々の期待に応えながらしっかりと商品を育てていきたい。

〈酒類飲料日報2017年12月28日付より〉

宝焼酎「レジェンド」を用いたRTD

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