日本酒「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分 遠心分離」リニューアル、全量遠心分離に/旭酒造
【関連記事】日本酒「獺祭」製造部の大卒初任給、30万円に大幅引き上げ、“5年で平均基本給2倍”目指す/旭酒造
従来の「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分 遠心分離」は、遠心分離の技術を使い圧力をかけずに搾った原酒に、通常のお酒の搾り方である圧力をかけて搾ったものをブレンドしていたが、今回のリニューアルでは遠心分離装置で搾った原酒100%とした。味わいは同商品の一貫した価値である「透明感ある味わい」の中に、華やかな香りときれいなふくらみや甘味が特徴。
6月25日には東京中央区の和食店「夢酒みずき」で発表会及び試飲会を開催し、商品特徴の説明や製法、リニューアルに至った背景を説明した。また、同店の料理と合わせて、従来商品と新商品の飲み比べも行われた。
同社の三浦史也工場長はまず、日本酒の工程における「遠心分離」技術について説明。「毎分3,000回転する遠心分離機に60Lのもろみを入れ運転を開始すると、約50分後に中心部分に澄んだお酒が集まるのでそれを上から取り出す。外部からの力が全くかからないので、(出品酒などを造る際に用いる)袋吊りよりもさらに柔らかな酒質のものとなる。ただし60L入れて取り出せるのは30Lほど。そこからおり引きをすると20Lほどとなり、本当に良い部分だけを抽出したものである。また、毎朝行っているテイスティングで“遠心分離”の品質基準に満たないと他の商品に変更されることもある」と話す。
リニューアルでは「特にもろみの段階で“遠心分離”に合うものとした他、遠心分離機の微調整もおこなった」としており、従来商品での「透明感のある味わい」を保ちつつ、香りや甘味、ふくらみといった要素を付加させることができたという。
〈「年間3,000本」で試行錯誤繰り返す、価格には「技術と手間を反映」〉
桜井一宏社長は今回のリニューアルに至った背景を次のように説明した。
旭酒造・桜井一宏社長
「当社では製造に携わる従業員が160人ほどで、これは灘・伏見の大手に比べても多い。小規模なタンクで年間約3,000回の仕込みを行っているため、多くの人員を必要とする。効率は悪いかもしれないが、手間をかけられるので品質向上につなげやすく、純米大吟醸酒らしい品質の追及ができる」と同社の製造体制を説明。
「年間3,000回の仕込み」のメリットとして「小規模な酒蔵の100年分にも相当する。その分をしっかりとデータ化することで、仮に求めている品質ではないものができてしまった時でも修正がかけやすい」と述べた。
その上で今回の「遠心分離」のリニューアルについては「当社が2000年から発売している商品で、通常の搾りのお酒に比べると透明感が特徴。だが、これまでは透明感があるだけでは納得できず通常の手法で搾ったお酒もブレンドしていた。クオリティに納得がいかず、3,000回の仕込みの中で試行錯誤を繰り返し、ようやく遠心分離機を用いたお酒だけでも自信をもってお勧めできる品質に仕上げられた」と話した。
既存商品に比べると倍近くになった価格設定について問われると「日本市場では“いいものを、より安く”という価値観が根強いが、ニューヨークにしても上海にしても、海外では技術や手間に対して相応の価値が付いてくるのは普通のことだ。当商品の価格にも技術と手間を反映させている。また、そこで得られた利益はさらなる品質向上のために積極的に投入していく」と理由を明かした。
〈酒類飲料日報2022年6月29日付〉