J-オイルミルズ 価格改定は原料上昇に追い付けず、状況反映させた価格水準目指す/2022年3月期第2四半期決算説明会
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八馬社長は価格改定の状況について、「着実に進展しているが、原料価格の上昇に対して上期は追い付いていないのが実態だ。業務用、家庭用を含めて、丁寧に環境を説明しながら、原料状況を反映させた価格水準を目指して取り組んでいく」とした。また、「原料や為替相場、菜種の品質や油分もこれまでにない環境と認識している」とした上で、5回目の価格改定について、「必要に応じて判断していきたいが、まずは現状発表している4回の価格改定の浸透に注力しつつ、今後の原料、為替状況を見て判断していく」と語った。
上期は増収減益となったが、売上高については、油脂製品の価格改定、ミール価格の上昇で20%増の940億円となり、「ほぼ期首想定値での着地となった」とした。営業利益については、大豆、菜種の原料相場の高騰を大きく受けたことで、「全体では上期は期首想定の範囲内だったものの、前年から98%減という厳しい結果となった」と振り返った。
そのうち、油脂事業の営業利益は95.6%減となる1.2億円と、前年同期から26.3億円の大幅減益となった。「原料影響が168億円、ミール価格上昇によって、その半分程度を打ち返すことで、全体では85億円の油脂コスト上昇となった」と説明した。販売価格改定については、「計画水準から若干の遅れはあったが、約50億円の価格改定効果があり、加えて販売量や高付加価値品の増加の影響もあった」とした。
〈下期は233億円の油脂コスト増加、乳系プラントベースドフードはシェア2割を目指す〉
通期の業績予想では営業利益を下方修正しているが、「大豆相場は相対的に落ち着いているが、依然これまでと比して高い水準でとどまっており、菜種やパーム油は注視が必要な状況が継続する。中でも菜種はカナダの減産に加えて、産地の乾燥気候に伴う油分低下がコストに大きな影響を与えると想定している。為替動向や価格改定の見通しも織り込んだ」と説明した。
下期の油脂事業は前年下期と比べて、原料コストは283億円のマイナス要因となることを想定している。大豆で64億円、菜種で154億円、為替やパーム油など購入油で40億円弱の影響を受ける見通しだという。ミール販売でプラス要因はあるが、油脂コスト全体では233億円のコスト上昇要因になることを見込んでいる。一方で製品販売については、「発表済みの4回の価格改定を織り込んで232億円の打ち返しとなるが、物量増加の影響で、生産・物流コストで8億の減益要因となる見込み」と説明した。
八馬社長は、「上期と下期を合算すると年間で318億円の油脂コスト増加となり、290億円近くを製品販売で打ち返す計画だ。相対的に価格改定が遅れていた大手外食、中食のユーザーを含めて、全体的な底上げを図ることでの実現を目指すが、下期の菜種相場上昇や油分低下の影響で、打ち手による効果は限定されることも踏まえ、減益想定となっている」と説明した。
服部広取締役専務執行役員油脂事業本部長は緊急事態宣言後の業務用の出荷について、「想定したよりも伸びていない。この1年以上、早く帰宅する生活パターンが浸透し、飲食店も酒類を提供するようになっているが客引きが早い。宣言が明けた10月の月初は良かったが、その後落ちてくる形でなかなか元に戻っておらず、19年の出荷と比べると、5ポイントほど未達が現状」とした。長持ち油の「長徳」は、「汎用油の価格がある程度浸透していく中で、コストアップに対してコストダウン、使い勝手の良さや環境対応を含めて提案することでシフトが進み、2ケタの伸びとなった」と述べた。
また、首都圏で販売開始したココナッツ油ベースのプラントベースドフード「ビオライフ」について八馬社長は、「大手スーパー、これまであまり取引のなかった高級スーパーを含め、配荷は順調に進んでおり、都市部中心に順調に回転している。しっかりと育成し、乳系プラントベースドフードの中で2割のシェアを獲得できる水準に育てていきたい」と意気込みを語った。
〈大豆油糧日報2021年11月18日付〉